共益費(読み)キョウエキヒ

改訂新版 世界大百科事典 「共益費」の意味・わかりやすい解説

共益費 (きょうえきひ)

(1)同一債務者に対する多数債権者にとって利益となる費用で,共益費用ともいう。債務者の財産の保存,清算,分配に必要な費用がこれにあたる。たとえば,債務者がもつ債権時効中断費用,債務者不在中の財産管理費用,債務者死亡による遺産整理費用,債務者の財産に対する強制執行費用等である。これらの費用を支出した債権者は,他の債権者に優先して債務者の一般財産から弁済をうけられる(民法306条1号,307条等)。

(2)建物等の共用部分の維持管理に要する費用で,共通費,共用費,管理費などともいう。貸ビルやマンションなどでは,各人が独占的に使用する専用部分と共同で使用する共用部分があることから,これらの賃貸借においては,契約実務上,前者については賃料の支払,後者については共益費の分担支払が当事者間で約定されることが多い。賃料と共益費の区別は,理論的にはともかく,実際には必ずしも明確でなく,共益費のなかに実質的に賃料に相当する部分が含まれていることがある。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「共益費」の意味・わかりやすい解説

共益費
きょうえきひ

法律上、同一の債務者に対する多数の債権者のうちある者が、総債権者の共同の利益のために費した費用をいう(民法307条)。たとえば、債権者の債務について時効を中断し、財産内容を明確にするために財産目録を調整し、あるいは強制執行をする場合の費用がこれにあたる。債権者の1人が共益費を支出した場合、その支出によって他の債権者も利益を受けるから、一般の先取(さきどり)特権によって優先弁済を受けることができる(同法306条)。

[淡路剛久]

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