(読み)かく

精選版 日本国語大辞典 「格」の意味・読み・例文・類語

かく【格】

〘名〙
① きまり。法則。法式。規則。
※米沢本沙石集(1283)一〇末「凡(およそ)世間出世の格(カク)をこえて格にあたるにあたらずと云事なし」 〔礼記‐緇衣〕
② くらい。地位。身分。程度。等級。
日葡辞書(1603‐04)「ソノ ヒトノ cacuga(カクガ) ヨイ、または、ワルイ
※家(1910‐11)〈島崎藤村〉上「家の格が違ひます」
③ 同じような仕方。流儀。手段。
※咄本・露休置土産(1707)一「よいあいさつ、出来た出来た。此後も其格(カク)にあいしらへよ」
※安愚楽鍋(1871‐72)〈仮名垣魯文〉三「去年の仕初(しぞめ)に勧進帳を見せた格(カク)でござへますがいいおもひつきじゃアござへませんか」
④ 品格。風格。
※中華若木詩抄(1520頃)上「此詩は、常の格ではないぞ、異相な詩と云こと也」
⑤ 奈良・平安時代、律令を執行するため、時に応じて発せられた修正、補足の命令。律・令・格・式の一つ。→格(きゃく)
⑥ 方形の囲い。区画。また、骨組み。
米欧回覧実記(1877)〈久米邦武〉一「車中の両側を六格に別ち、毎格に二人を容(いる)る」
⑦ 文法で、文中のある語句(特に名詞・代名詞)が他の語句に対してもつ文法上の関係。主格、述格、連体格など。〔小学日本文典(1874)〕
論理学で、三段論法の形式。大小両前提に共通な媒概念中概念)の位置によって、各種の形式に分類できる。
⑨ 商品取引所の語。商品の各銘柄の内から一定の標準品を選び、これに比較して定めた各銘柄それぞれの品質、値段の差。→格付け

こ【格】

〘名〙 (語源は「子」か)
格天井(ごうてんじょう)の竿材。または、格天井の一つ一つの格子。
※今昔(1120頃か)二七「天井の組入の上に〈略〉組入れの子毎に顔有り」
② 梯子(はしご)の足をかける横木。
古今著聞集(1254)一四「寝殿の前をへて階(はし)の子をななめにおりくだりて」
③ 障子の骨。または、格子の桟(さん)
※咄本・詞葉の花(1797)どらむすこ「此格子のこを一本ぬいて置きますから」
④ 碁盤や将棋盤の面に縦横に引いた線。

きゃく【格】

〘名〙 令制において律・令の不備を補い、改正するために出された臨時の単行の法令。詔勅、太政官符の形式で発令された。
※続日本紀‐慶雲三年(706)二月己亥「五世王朝服、依格始着浅紫

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デジタル大辞泉 「格」の意味・読み・例文・類語

かく【格】[漢字項目]

[音]カク(漢) コウ(カウ)(慣) ゴウ(ガウ)(慣) キャク(呉) [訓]いたる いたす ただす
学習漢字]5年
〈カク〉
組成された物事の本質をなすもの。「骨格人格性格体格
そのもののかもし出すすぐれた個性。「格調品格風格
がちっとはめこまれた一定の枠。規則・基準・地位・等級など。「格外格式格別家格規格厳格資格失格昇格正格適格同格破格別格本格
本質までつきつめる。いたす。「格物致知
止める。固定する。「格納
(「かく」と通用)取っくみ合う。うつ。「格技格闘
文法で、自立語の関係を表す語。「主格賓格目的格
〈キャク〉法令。「格式
〈コウ・ゴウ〉細い木を方形に組み合わせてつくったもの。「格子こうし格天井ごうてんじょう
[名のり]きわめ・ただ・ただし・つとむ・のり・まさ

かく【格】

地位。身分。また、等級。「が上がる」「が違う」「グループのリーダー
物事の仕方。流儀。
「その―で行くと川へ落ちれば必ず死ぬ事になる」〈漱石吾輩は猫である
決まり。規則。法則。
「―ニハズレル」〈和英語林集成
case》文法で、名詞・代名詞・形容詞などが文中においてもつ他の語との関係。主格所有格目的格など。いくつの格が立てられるかは言語によって異なる。
論理学で、三段論法の形式。大前提小前提に共通の媒概念(中概念)の位置によって定まる。
[類語]位置地位ポストポジション椅子肩書き役職役付き階級身分

きゃく【格】

奈良・平安時代の律令の追加法令。律令の追加・修正の必要があるとき、詔勅太政官符の形式で公布した。また、それを編集した書物。

こ【格】

障子の桟やごう天井などの骨組みのように、縦横に組んだもの。
階段やはしごなどの、足を掛けて上り下りするための横木。
碁盤・将棋盤の縦横に引いてある線。

こう【格/較】[漢字項目]

〈格〉⇒かく
〈較〉⇒かく

きゃく【格】[漢字項目]

かく

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改訂新版 世界大百科事典 「格」の意味・わかりやすい解説

格 (かく)
case

言語学の用語。文の中で,名詞や代名詞(または名詞句)の表す事物と,別の名詞などの表す事物,あるいはその文の述語の表す動作や属性との間の関係は,言語によって異なる方法で表される。最も一般的な用法では,そうした関係が名詞や代名詞の語形変化という形で表される場合に〈格〉という用語が使われる。たとえば,ラテン語でpuellamは〈少女を〉といった意味で,その〈を〉に該当するのは-(a)mのあたりであり,かつ,前の部分(語幹)との間の境界線があまり明確でない。ラテン語文法では,このようなpuellamと同様の機能を有する名詞活用形を〈対格〉と呼んでいる。対格を表す語尾は名詞によって一様ではない。ラテン語では,こういった格が六つ区別されている。しかし,一方,そのような関係が単語といえるものによって表される場合にも,〈格〉という用語が使われることがある。たとえば,大まかにいってある動作の向かう対象を表す,日本語の〈を〉などは〈格助詞〉と呼ばれる。さらに,上述の関係それ自体を,それがどういう手段で表されるものであれ,〈格(関係)〉と呼ぶ考え方がある。ただし,言語によって非常に異なった表れを無限定に同一術語で呼ぶことには問題があり,少なくとも,(1)語形変化が問題のもの,(2)単語が用いられるもの,(3)名詞などの位置でそうした関係が表されるもの,は言語の本質上かなりちがったものであることを明確にしておく必要があろう。

 しかし,すべての言語が上の三つのどれか一つだけを用いるというわけではない。第1に,そうした関係をすべて名詞などの位置で表し分けることは不可能であり,(3)だけを用いることは不可能である。たとえば,(3)を用いる英語などにも前置詞,つまり(2)の例や〈所有格〉や〈目的格〉(代名詞のみ),つまり(1)の例がある。第2に,(1)とか(2)が存在しても,(3)があってはならないことにはならない。ドイツ語では,英語に比して(1)の意味での〈格〉を保存しているのに,名詞の位置もある場合に有意味である。第3に,単語を用いるといってよいのか語形変化であるといってよいのか判然としない場合がある。たとえば,チベット語では,〈…の〉を表す場合,名詞が子音または長母音で終わっている場合には単語といえるものがつくが,短母音で終わっている場合には融合長母音に変化することによってそれが表される。kong(彼)→kong gi(彼の);nga(私)→ngää(私の)。第4に,(1)と(2)を組み合わせて,ある関係を表すことも可能である。ドイツ語のauf dem Boden(三格,〈床の上に〉-静止),auf den Boden(四格,〈床の上へ〉-方向)。

 個々の言語において,上述のような関係がどのように区分され,また,何によって表れているか,述語の動詞などの形との関係はどうであるのか,といったことは,きわめて重要な問題の一つである。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「格」の意味・わかりやすい解説


かく
case

広義では,名詞およびそれに準じる言語要素が文のなかで他の単語に対してもつ関係,狭義では,同上の関係の違いが名詞およびそれに準じる機能をもつ単語の形のうえに反映し,語形替変の体系,すなわち曲用をもつ文法範疇をいう。格の定義は学者によりさまざまであるが,一応,広義のほうは「格関係」と呼び,「格」は狭義のほうに限るとする。格関係は,名詞および名詞に類する機能をもつ単語が文において働くときにはなくてはならぬもので,格に限らず,前置詞,語順その他の言語的手段として,すべての言語に存在している。日本語では,格関係は一種の後置詞ともいえる格助詞 (ガ,ノ,ニ,ヲなど) によって表わされるが,花ガ,花ノ…において,「花」という独立に形を変えず使われうる形が取出され,しかも花ダケガのように,中間に別の単語が入りうるなど,結びつきがゆるく,「花」も格助詞も単語とみなしうるものである。したがって格はないことになる。トルコ語の ev「家ガ」,ev-i「家ヲ」,ev-in「家ノ」,ev-e「家ヘ」,ev-de「家デ」,ev-den「家カラ」では,常に共通要素-i,-in,-e,-de,-den (ただし母音調和あり) が取出される点,日本語に近いが,evと-iなどとの間はより緊密で別の単語が入りえないから,-iなどは接辞であり,ev-i全体で1単語と認められる。したがって,1種類の規則的曲用による格をもつといいうる。サンスクリット語では融合度が強く,典型的な8つの格をもつ。上の3言語の代表する類型の境界は明確なものではなく,また格をもっていても,他に格関係を表わす手段ももっているのが通例。フィンランド語は 15,ハンガリー語は 24の格をもつが,文法的格は3~4個で,大部分は場所的な格である。

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百科事典マイペディア 「格」の意味・わかりやすい解説

格【かく】

名詞代名詞形容詞において文中の他の語との文法関係あるいは具体的な場,時間などを表す文法範疇(はんちゅう)。日本語は,〈が・の・に・を〉のような助詞を用いるが,英語では一般に語順と前置詞で,ラテン語は格語尾変化でこれを表す。主(……が),対(……を),属(……の),与(……に)の各格のほか,具(……で),奪(……から),於(……において)などの格をもつ言語もある。
→関連項目人称代名詞

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「格」の解説


きゃく

律令の規定を修正したり補足するため制定される単行法,ないしそれを編纂した法令集。中国の隋・唐では律令と同時に格も編纂されたが,日本では編纂が遅れ,9~10世紀初頭に弘仁格・貞観格・延喜格のいわゆる三代格が編纂された。その際に単行法としての当初の形が変更される場合があった。体裁は式と同じく官司ごとに分類されたが,現在は弘仁格の目録が「弘仁格抄」として伝わるのみ。ただし内容は11世紀の「類聚三代格」や諸書所引の逸文から知られる。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「格」の解説

格(かく)

律令(りつれい)

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旺文社日本史事典 三訂版 「格」の解説


きゃく

律令条文の改正・追加法令
詔勅や太政官符の形式で発令された。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【巣】より

… また,ゴリラやチンパンジーは毎日夕方に樹枝で就眠用の〈巣〉を造る(鳥についてはこのようなものは〈ねぐら〉または〈ねぐら穴〉と呼んで巣とはいわない)。このように,繁殖とは関係がなくとも,みずから造る構造物であれば巣と呼ぶことも一方では行われて,アリジゴクの巣,クモの巣web,トビケラの巣caseなどにまで概念が拡張されている。動物の中で手の込んだ顕著な巣を造るものは,哺乳類(カヤネズミ,ビーバーなど),鳥類(ハタオリドリが有名),魚類(トゲウオなど),昆虫類(シロアリ,ミツバチなど),クモ類などであるが,これらの動物が示す造巣行動(造巣技術nest‐building)は古くから博物学者の注目を浴びてきた。…

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