豆腐を凍結,乾燥させた食品。凝(こごり)豆腐,凍(しみ)豆腐,あるいは紀州高野山で作りはじめたとして高野(こうや)豆腐とも呼ぶ。《本朝食鑑》(1697)などに寒夜の戸外で凍結させて作る方法が記されているが,現在では人工凍結法による製品がほとんどで,その90%までが長野県で生産されている。人工凍結法は1901年に開発され,以後品質の安定と通年生産が可能なため,この方法が普及した。29年にアンモニア膨軟加工法,さらに72年には梘水(かんすい)法による膨軟加工が行われるようになって,調理性と品質はいちじるしく向上した。アンモニア法には公害問題もあったため,現在はその最終工程だけを改良した梘水法が採用されている。これは通常よりもやや低温,短時間で豆腐を作り,これを切って-15℃で急速冷凍後,-3℃で3週間放置熟成させる。これを解凍,脱水,熱風乾燥したのち,重曹を主成分とする液を散布し乾燥して製品とするものである。凍豆腐は成分の50%程度がタンパク質で,栄養価も高く,消化もよいが,消費傾向は近畿54%,中国・四国18%,東北10%,関東6%と西高東低型を示す。一般に淡色で甘みの多い含め煮にするが,汁の実やなべ物の具にしてもよい。
執筆者:平野 雄一郎
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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