豆腐の加工品。固めにつくった豆腐を小形に切って凍らせ、脱水乾燥したもので、高野(こうや)豆腐、凝(こごり)豆腐、凍(しみ)豆腐ともいう。紀州(和歌山県)の高野山の僧が創始したといわれ、これが高野豆腐の名の由来となっている。また、武田信玄(しんげん)あるいは真田幸村(さなだゆきむら)が兵の携行食糧として考案したとの説、幸村が高野山に隠れていたとき発明したという説もある。
[河野友美・山口米子]
寒中に屋外で凍らせる天然冷凍と機械冷凍とがある。豆腐を凍結後、氷の溶けない温度の冷凍室に2~3週間貯蔵する。この間に組織中の氷の結晶を成長させる。これによって、スポンジ状態がうまく形成され大豆タンパク質を変性させる。解凍は温水中で行い、これを圧搾脱水、乾燥によって、特有の風味と肉質の製品が得られる。なお、調理の際のもどりをよくする目的で、乾燥後、減圧下でアンモニアガス中に一定時間放置して、アンモニアガスを吸収させる方法が行われてきたが、近年は、重曹(炭酸水素ナトリウム)を加えて膨軟加工し、湯でもどす操作の不要のものが多くなっている。したがって使用時にはその製品についての使用法に従うことがたいせつである。長野や東北地方でつくられる伝統的凍豆腐は、自然に凍らせた豆腐をそのまま自然乾燥して仕上げたもので、固い口あたりである。
凍り豆腐はタンパク質を49%も含み、また脂肪も33%含む栄養価の高い食品で消化もよい。保存食品であるが日数がたつと風味が低下する。一般に新しいものほど味がよい。
[河野友美・山口米子]
関西地方で精進料理によく用いられるが、アンモニア加工のものでは、使用する際に湯でもどし、白い汁の出なくなるまで洗って復原させる。もどし不要のものは、熱湯に浸すと崩れることがある。料理は含め煮にされることが多い。薄味で、よいだしを使うことが味よく仕上げるこつである。関西では、味つけして煮た凍り豆腐を巻きずしの芯(しん)に使う。卵とじや炒(いた)め物、揚げ物にも使用できる。
[河野友美・山口米子]
『宮下章著『凍豆腐の歴史』(1962・全国凍豆腐工業協同組合連合会)』▽『渡辺篤二・斎尾恭子・橋詰和宗著『大豆とその加工 1』(1987・建帛社)』
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