日本大百科全書(ニッポニカ) 「剰余金計算書」の意味・わかりやすい解説
剰余金計算書
じょうよきんけいさんしょ
surplus statement
一事業年度における剰余金の期中増減と期末残高を記載した計算書。財務諸表の一種であったが、現在は廃止され、株主資本等変動計算書が導入されている。以前は、利益剰余金計算書が作成され、繰越利益に繰越利益の当期増加高と同減少高を加減し繰越利益期末残高を求め、これに当期純利益を加算して当期未処分利益が算定された。しかし、1974年(昭和49)商法と企業会計原則の一元化を目ざして企業会計原則が修正され、損益計算書において当期未処分利益まで記載することとなったため、利益剰余金計算書は廃止された。そして、未処分利益をどのように処分するかを記載した利益処分計算書(利益処分案)が財務諸表の一つとして規定された。ただし、連結会計においては、連結財務諸表の「その他の剰余金」の期中増減と期末残高を記載した連結剰余金計算書が作成されてきた。
その後、2005年(平成17)に公布された会社法において、株式会社は、株主総会または取締役会の決議により、剰余金の配当をいつでも決定でき、また、株主資本の金額をいつでも変動させることができることとされたため、貸借対照表・損益計算書だけでは、資本金や剰余金の数値の連続性を把握することが困難となった。そのため、利益処分計算書(利益処分案)および連結剰余金計算書を廃止し、株主資本等変動計算書等を作成することとした(会社計算規則96条)。株主資本等変動計算書等には、株主資本の各項目について、前期末残高、当期変動額および当期末残高に区分し、当期変動額は変動事由ごとにその金額を表示する(2005年12月に企業会計基準委員会が公表した企業会計基準第6号「株主資本等変動計算書に関する会計基準」より)。
[中村義人 2022年11月17日]