加役(読み)カヤク

デジタル大辞泉 「加役」の意味・読み・例文・類語

か‐やく【加役】

本職以外に臨時につとめる役。また、その人。
律令制で、正規の夫役ぶやくほかに追加された臨時の夫役
江戸時代火付盗賊改ひつけとうぞくあらための俗称。
歌舞伎で、自分の役柄以外の役を演じること。立役たちやく女形おやまになったりすること。また、それによって受け取る特別手当。

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精選版 日本国語大辞典 「加役」の意味・読み・例文・類語

か‐やく【加役】

〘名〙
① 正規の夫役(ぶやく)のほかに追加された臨時の夫役。
※続日本紀‐和銅二年(709)正月壬午「行濫逐一レ利者、加杖二百、加役当徒、知情不告者、各与同罪
② 本職以外に臨時につとめる役。また、その人。⇔本役
※寛永版曾我物語(南北朝頃)四「然かのみならず、臨時のかやく」
③ ②のうち、特に江戸幕府の職名で、江戸市中の治安を担当した火附盗賊改(ひつけとうぞくあらため)をいう。
※大概順(江戸末か)(古事類苑・官位五三)「御先手より加役 四十人扶持 火附盗賊改」
④ (②から転じて) 物事の助けとなるもの。
洒落本・女鬼産(1779)「かれはいまだ年数不立間、歌舞のぼさつの加役を勤め」
⑤ 歌舞伎で、役者が自分の持役以外の役を勤めること。立役が女形になり、あるいは、女形が立役になったりする類。また、それによって受け取る特別手当をいう。江戸中期ごろ役柄の分業制がくずれ始めて起こったもの。
※雑俳・柳多留‐一四五(1837)「加役で当(あて)魯智深と日本武」

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「加役」の解説

加役
かやく

江戸時代,幕府の本役をもつ者に加えられた臨時的な役職のうち,専任者をおかない特定の役職。道中奉行火付盗賊改が有名。道中奉行は大目付勘定奉行,火付盗賊改は先手頭の加役である。のちにはたんに加役というと,火付盗賊改のことをさすようになった。大目付には道中奉行のほか,分限帳改・鉄砲改宗門改の加役があり,宗門改は作事奉行の加役でもあった。

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世界大百科事典(旧版)内の加役の言及

【加番・加役】より

…駿府加番に対しては役扶持が与えられていた。加役は本役に対する助役の意,または本役を持つ者に加えられた臨時的な役職を意味する。江戸幕府の職制ではとくに火付盗賊改についていわれることが多い。…

【先手組】より

…またそのうちの1組は本役として火付盗賊改に出役し,冬季には別に他の1組が本役の補助として勤務した。これを加役という。このほか将軍の出行に供奉してその地を警固し,臨時に市中を巡回して非常の警戒にあたった。…

【火付盗賊改】より

…放火犯と盗賊をおもな対象としたため,このような名称となる。本来の役(先手,持筒,持弓)に加えて課せられた仕事なので,加役とも称される。配下に与力(5~6騎より10騎),同心(30~50人)があり,目明しも使用した。…

※「加役」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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