勘定奉行
かんじょうぶぎょう
江戸幕府や諸藩の職制の一つ。鎌倉・室町時代にも勘定奉行、勘定頭(がしら)の名称がある。江戸幕府の勘定奉行は、勘定所の長官として天領支配、貢租徴収、財政運営や天領と関八州の大名・旗本領などの訴訟を管掌し、寺社奉行・町奉行とともに三奉行の一つで評定所(ひょうじょうしょ)の構成員である。元禄(げんろく)(1688~1704)ころまでは勘定頭と称したが、成立の経緯は不明な点が多い。1609年(慶長14)松平正綱(まさつな)が会計総括を命じられ、15年(元和1)老中就任とともに勘定奉行を兼務した。1635年(寛永12)幕府は老中以下主要役職の管掌事項を定め、関東幕領と農民の訴訟は正綱、伊丹康勝(いたみやすかつ)、伊奈忠治(いなただはる)、大河内久綱(おおこうちひさつな)、曽根吉次(そねよしつぐ)の月番勤務とし、これが後の勘定奉行の職掌とされる。1642年金銀納方を職務の一とした留守居(るすい)のうち酒井忠吉(ただよし)、杉浦正友(まさとも)が国用査検、曽根、酒井、杉浦、伊丹が租税財穀出納を命じられ、伊奈は勘定頭を免(ゆる)された。この時点で農政部門と財政経理部門が合一し勘定頭制が成立した。奉行の定員は4名で、ときに3~5名。1721年(享保6)勘定所は公事方(くじかた)・勝手方(かってかた)に分かれ、翌年奉行も双方に分けられ1年交代で勤務した。老中支配で芙蓉間詰(ふようのまづめ)、役高3000石で従(じゅ)五位下、役料700俵、手当金300両支給を例とした。勘定組頭、勘定、支配勘定および郡代、代官、切米手形改役、蔵奉行、金奉行、漆(うるし)奉行、林奉行、川船改役、評定所留役(とめやく)などを支配。1698年(元禄11)松平重良(しげよし)の道中奉行兼帯以来、公事方勘定奉行の1人が道中奉行を兼務した。
[大野瑞男]
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かんじょう‐ぶぎょう カンヂャウブギャウ【勘定奉行】
〘名〙
① 鎌倉・室町幕府の職名の一つ。諸国から上納された年貢の結解(けつげ)、勘定などをつかさどった奉行。公事(くじ)奉行人のうちから必要に応じて任命されたもので、常置のものではなかった。
② 室町・戦国時代、諸大名家に置かれ、領内の財務をつかさどった役人。勘定頭。
※甲陽軍鑑(17C初)品一七「勘定奉行 一 青沼助兵衛 騎馬拾五騎 足軽三十人」
③ 江戸幕府の職名の一つ。老中支配に属し、郡代、代官を監督し、幕府直轄地の年貢の徴収、裁判をはじめ民政全般をつかさどるとともに、幕府の金銭の出納、その他財務関係の職務を担当した役人。寺社奉行、町奉行と合わせて三奉行と称せられ、評定所一座を構成した。江戸初期には勘定方といわれたが、四代将軍家綱のころからその名は次第にすたれ、八代将軍吉宗以降はこの名称に統一された。勘定頭。勘定方。
※禁令考‐前集・第二・巻一五・明和二年(1765)三月「総而御勘定奉行之儀者、御勝手向御役所相勤候事故」
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勘定奉行
かんじょうぶぎょう
江戸幕府の職名。寺社奉行,町奉行とともに「三奉行」という。租税の徴収管理を司る勘定所の長官をいい,財務諸官庁を支配した。古くは勘定頭 (かんじょうがしら) といったが,宝永年間 (1704~11) 頃に勘定奉行と改まり,定員はほぼ4名で旗本から選任された。享保7 (22) 年には財務を扱う勝手方,司法を扱う公事方 (→公事 ) の両部門に分れ,隔年交代,月番制で執務するようになり,その職制がほぼ確立した。また各藩にも財政・司法を司る勘定奉行 (他の名称の藩もある) がおかれた。
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勘定奉行
かんじょうぶぎょう
江戸幕府の職名。三奉行の一つ
幕府財政の管轄と,関八州の天領・私領内の庶民の訴訟を取り扱い,また郡代・代官などを支配して天領の民政を統轄した。1680年以降は道中奉行も兼任。定員は4名で旗本から選任された。1722年,勝手方(財政関係を担当)と公事方(訴訟関係を担当)に分かれた。
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デジタル大辞泉
「勘定奉行」の意味・読み・例文・類語
かんじょう‐ぶぎょう〔カンヂヤウブギヤウ〕【勘定奉行】
1 中世、幕府や諸大名の家に置かれた職名。金銭や穀物などの出納をつかさどった。勘定頭。
2 江戸幕府の職名。寺社奉行・町奉行とともに三奉行の一。老中に属し、幕府財政の運営や諸国代官の統率、また、幕府直轄地の収税、金銭・穀物の出納、領内人民の訴訟などをつかさどった。勘定頭。
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勘定奉行
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かんじょうぶぎょう【勘定奉行】
江戸幕府および諸藩の職制の一つ。鎌倉時代に公事奉行人のうちで諸国年貢の受取り,勘定をする者を勘定の奉行人と称したが,室町時代の諸大名家に勘定奉行,勘定頭の名称が使われ,常置の職とされた。江戸幕府の勘定奉行は寺社奉行,町奉行とともに三奉行の一つで,評定所構成員である。勘定所の長官として幕府財政事務を統轄し,御料(幕府直轄領,天領)の支配と貢租徴収,全国の御料と関八州の大名・旗本領などの私領の訴訟を受理した。
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世界大百科事典内の勘定奉行の言及
【評定所】より
…評定所一座の勤務時間は朝卯半刻(午前7時ごろ)から夕申刻(午後4時ごろ)までであった。評定所で取り扱う事件は,公事出入(民事)では原告,被告の支配が異なる事件で,寺社および寺社領,関八州以外の私領からの出訴は月番の寺社奉行が目安裏判をして評定所へ送り,江戸町中からの目安には町奉行が,関八州の幕領,私領および関八州外の幕領からの出訴は勘定奉行が目安裏判をすることになっていた。詮議事(刑事)では,とくに重要な事件や複雑な事件,あるいは上級武士にかかわる事件を取り扱った。…
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