改訂新版 世界大百科事典 「労働科学研究所」の意味・わかりやすい解説
労働科学研究所 (ろうどうかがくけんきゅうじょ)
日本では紡績業の女工の労働条件は明治・大正期から昭和の初頭にかけとくに劣悪で,過労から健康を害するなどの問題が多かった。この合理的解決の基礎を科学的研究に求めようとした大原孫三郎は,彼が設立した大原社会問題研究所の暉峻義等(てるおかぎとう)にそのための研究を要請し,1921年医学,心理学を中心とする倉敷労働科学研究所ができ,後に社会科学部門が加えられた。初期の研究には,創立10周年に暉峻による〈婦人労働に関する生物学的見解〉と総括されるものがあるが,当時の工場法改正の必要を婦人労働保護の視点から訴えた。1937年東京に移転,第2次大戦中産業報国会に吸収されたため敗戦とともに解散されたが,45年末に財団法人労働科学研究所(労研と略称)として再建され今日に至る。労働力と労働負担の生理・心理学的研究,労働環境と職業病の衛生・病理学的研究,労働生活に関する社会科学的研究を行う。現在は川崎市宮前区に所在。
執筆者:斉藤 一
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