正式名称は「動物の愛護及び管理に関する法律」。昭和48年法律第105号。1973年(昭和48)「動物の保護及び管理に関する法律」として制定され、その後1999年(平成11)の改正により現名称に改称された。
日本には、この法律が制定される以前から家畜伝染病予防法や狂犬病予防法、軽犯罪法、文化財保護法、鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律(現在は鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)など、動物に関する法律が数多く制定されたが、それらはそれぞれの制定目的等を異にし、ほとんどが動物を利用する人間の安全性・優位性を担保するもので、動物に対する配慮はとくになされていなかった。
こうしたなかで、明治以降長年にわたり動物の虐待防止を求めてきた多くの人々の努力と、第二次世界大戦後の「ペットブーム」や動物保護活動の世界的な広がりなど社会情勢の変化を受け、動物保護と動物による人の生命等に対する被害防止の見地より、動物に関する総合的な措置が必要となってきたことから、本法律が制定された。人の管理下にある動物はもちろんのこと、一部は野生の動物にも関係した、人と動物とのかかわりに関する基本法となっている。動物の虐待を防止し、動物を適正に取り扱うこと等を通して国民の間に動物を愛護する気風を招来し、生命を尊重し、人を愛し、平和を願う心を育むとともに、動物の管理を徹底し、動物によって人の生命、身体、財産に対する侵害を防止することを第1条に目的として掲げている。
おもな内容は、動物愛護の基本原則を、動物は命あるものであり、何人も動物をみだりに殺し、傷つけ、苦しめることのないようにする。また、人と動物の共生に配慮し、その習性を考慮して適性に取り扱う、としたうえで、人間社会のなかで動物を取り扱う場合の基本的考えを示している。それを基に行政の取り組むべきこととして、動物愛護週間(毎年9月20~26日)その他動物愛護思想の普及啓発の実施についてあげている。動物愛護および管理に関する施策についての基本指針や基本計画の策定などを規定しており、国民が取り組むべきものとして、病気やけがをしている動物を発見した場合の飼い主や行政機関への通報、動物を飼養する場合の適正な取扱い、周辺住民への迷惑防止、動物販売業者の責務、動物取扱業(販売、保管、貸出、訓練、展示)の登録や取扱責任者の選任など、多くの関連事項も規定されている。
また、私たちは動物をいろいろな面で活用し、なかにはやむをえず動物を傷つけ、苦しめ、ときには命を奪うこともある。このような場合の取扱いについても、動物の殺処分方法に関する指針や、動物実験での苦痛の軽減や実験に使用する数の削減、代替法の利用などの規定がある。法令に対する違反については罰則が設けられ、愛護動物(44条4項に掲げられた牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと、あひる、その他、人が占有している動物で哺乳類(ほにゅうるい)、鳥類、爬虫類(はちゅうるい)に属するもの)をみだりに殺し、または傷つけた者は2年以下の懲役または200万円以下の罰金が科され、愛護動物に対し、給餌(きゅうじ)・給水をやめ衰弱させるなどの虐待をした者、および愛護動物を遺棄した者は100万円以下の罰金等が科される。これらの規定は、人間社会に動物をもち込み、活用している者として守るべき最低限度のことを示したものである。
[池澤聖明]
2019年(令和1)6月、同法は改正され、飼い主情報などを記録したマイクロチップを犬や猫に装着し、登録することを販売業者に義務づける(一般の飼い主には努力義務を課す)とともに、生後56日(8週)以内(改正前は49日以内)の犬や猫の販売が禁止された。マイクロチップの義務化は公布から3年以内に施行される。また、罰則規定も強化され、動物の殺傷に対しては懲役5年、罰金500万円(改正前は懲役2年、罰金200万円)、虐待・遺棄は懲役1年、罰金100万円(改正前は罰金100万円)となった。
[編集部]
『動物愛護管理法令研究会編『改正動物愛護管理法――解説と法令・資料』(2001・青林書院)』▽『吉田真澄編著『動物愛護六法』(2003・誠文堂新光社)』
(石田卓夫 日本臨床獣医学フォーラム代表 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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