中国,太古より宋代までの簡略な史書。宋末・元初の曾先之(そうせんし)撰。2巻。通行本は後代の増補を経て,明の陳殷の音釈,劉剡(りゆうえん)の標題,王逢の点校を付した7巻本。十八史とは正史のうち《史記》から《新五代史》までの十七史に《宋史》の記事を加えるの意である。宋・元代以後,簡易な通史が一般に求められる風潮があり,元・明代の江西地方を中心とする南中国でこの書が歓迎された。史料的価値は低い俗書であるが,多くの故事,逸話を含み,初学者のための入門書として読まれてきた。朝鮮では15世紀初めに銅活字によって刊行された。日本では1526年(大永6)上杉憲房が足利学校にこの書を寄進したのが最も古い記録である。江戸時代を通じて幼年就学者のための読本として,明治以後も学校用の漢文また歴史の教科書として盛んに用いられた。そのため日本における注釈書や国字解の類は数十種の多きにのぼる。なお元代の記事を加えた《十九史略》も明代に作られた。
執筆者:植松 正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
中国、元代につくられた簡略な中国史教科書。撰者(せんじゃ)の曽先之(そうせんし)は字(あざな)を子野(しや)といい、廬陵(ろりょう)(江西省)の人であるが、経歴は明らかでない。本書は『古今歴代十八史略』の略称であって、『史記』から『新五代史』までの正史17種と、宋(そう)代の史書、つまり北宋は李燾(りとう)著『続資治通鑑(しじつがん)長編』、南宋は劉時挙(りゅうじきょ)著『続宋編年資治通鑑』などを材料として、太古から宋末までの中国史を、逸話を交えつつ簡略に記したものである。もと2巻であったが、明(みん)初に陳殷(ちんいん)が音釈を加え7巻に分けて以後、このほうが通行した。通行本は巻数が多いだけでなく、記事内容にも原本と異同がある。ことに三国時代について、原本は魏(ぎ)を正統王朝としたのに対し、通行本は朱子の『通鑑綱目』によって蜀(しょく)を正統とした。わが国へは室町時代には伝来し、江戸時代になると初学者向きの漢文読本として盛んに用いられて明治以後に及び、その注釈書もきわめて多い。
[竺沙雅章]
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出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報
『史記』以下17の正史に宋代の記録を加えて概述した通史。宋末元初の曾先之(そうせんし)の撰。簡易平明に中国史の大要を知るに適当な入門書。現行本は明の陳殷(ちんいん)が音釈を加えた7巻本。
出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報
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