単調関数(読み)たんちょうかんすう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「単調関数」の意味・わかりやすい解説

単調関数
たんちょうかんすう

増加関数減少関数をあわせていう術語。減少関数は、マイナスをつければ増加関数になるから、以下の説明では増加関数について述べる。実数のある区間a≦x≦b(区間の片方、または両方の端が入っていなくてもよい。またa、bは±∞でもよい)において定義された実数値関数f(x)に対し、
  x1<x2 ならば f(x1)≦f(x2)
であるとき、f(x)はこの区間で単調増加であるという。もし、ここで、つねにf(x1)<f(x2)であるときは、単に増加(または狭義の増加)関数という。たとえば、
  f(x)=x (-∞<x<+∞)
  f(x)=x2 (x≧0)
などは増加関数である。また、
  f(x)=[x] (-∞<x<+∞)
単調増加関数である(図A)。ここで[x]はxの整数部分、すなわちxより大きくない整数のうちで最大のものを表す。[x]はガウス記号とよばれている。このように全区間がいくつかの区間に分けられ、各小区間の上では定数値をとりながら増加していくような関数を階段関数という。

 単調増加関数は次のような性質をもつ。

(1)単調増加関数は、かならずしも連続ではないが、不連続である点は、たかだか可算個で、不連続点においては、左側からの極限値、右側からの極限値を有する(図B)。

(2)連続な増加関数は逆関数を有し、逆関数もまた連続、増加である。

(3)単調増加関数は、ほとんどすべての点で、すなわちルベーグ測度が0であるような集合上を除いて微分可能である。

(4)f(x)がすべての点の上で微分可能で、f′(x)≧0ならばf(x)は単調増加である。

(5)単調増加関数は、リーマン積分可能である。

(6)区間[a,b]上の単調増加関数f(x)は、[a,b]上でフーリエ級数に展開できる。すなわち、そのフーリエ級数は、すべての点で収束し、f(x)の連続点では、その値はf(x)に等しい。これはフーリエ級数論において、ディリクレが印(しる)した第一歩であった(1829)。

 単調増加関数の差として表される関数を有界変動関数という。これは次のような性質で特徴づけられる。c,d(c<d)を定義域なかの任意の2点とすれば、ある正数Mがあって、
  c=x0<x1<x2<……<xn=d
というような点x1,x2,……,xn-1をどのようにとっても
  |f(x1)-f(x0)|
   +|f(x2)-f(x1)|
   +……+|f(xn)-f(xn-1)|≦M
となる。

[竹之内脩]


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改訂新版 世界大百科事典 「単調関数」の意味・わかりやすい解説

単調関数 (たんちょうかんすう)
monotone function

実変数の実数値関数fx)があって,x1x2ならばfx1)≦fx2)となるとき,fx)を単調増加関数,または単に増加関数という。また,x1x2ならばfx1)≧fx2)となるとき,fx)を単調減少関数,または単に減少関数という。増加関数と減少関数とを総称して単調関数という。とくに,x1x2なるかぎりfx1)<fx2),またはfx1)>fx2)となるとき,それぞれfx)は狭義単調増加,または狭義単調減少であるといい,これらの場合を総称して狭義単調であるという。関数の単調性は,その定義域の一部の区間についていうこともある。例えば,nを自然数として区間(-∞,∞)において関数fx)=xnを考えると,fx)はn奇数ならば単調増加であり,nが偶数ならば単調関数でない。しかし,nが偶数のとき,関数fx)=xnは区間(-∞,0)においては単調減少であり,区間(0,∞)においては単調増加である。一つの区間で定義された連続関数が1価な逆関数をもつための条件は,その関数がその区間で狭義単調なことである。一つの区間で微分可能な関数fx)が,その区間で単調増加,または単調減少であるための条件は,それぞれ,その区間でf′(x)≧0,またはf′(x)≦0なることである。もしもその区間でつねにf′(x)>0,またはつねにf′(x)<0ならば,fx)は狭義単調増加,または狭義単調減少である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「単調関数」の意味・わかりやすい解説

単調関数
たんちょうかんすう
monotone function

単調増加関数と単調減少関数とを総称して単調関数という。関数 f(x) がある区間 [ab] で定義され,その区間内の任意の x1x2 ( x1x2 とする) に対して,常に f(x1)≦f(x2) であれば,f(x) は区間 [ab] において単調増加関数であるといい,また f(x1)≧f(x2) であれば,f(x) は区間 [ab] において単調減少関数であるという。以上を総称して広義の単調関数という。これに対して,x1x2 のとき,f(x1)<f(x2) あるいは f(x1)>f(x2) であるものを,狭義の単調増加関数あるいは単調減少関数という。

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