危険ドラッグ(読み)きけんどらっぐ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「危険ドラッグ」の意味・わかりやすい解説

危険ドラッグ
きけんどらっぐ

中枢神経系の興奮や抑制あるいは幻覚を引き起こす作用をもち、人体危害を及ぼす可能性のある危険な薬物。依存性の高い薬物で、禁断症状から乱用を繰り返すことも多い。厚生労働省ではこれらの薬物を指定薬物に指定し、販売した場合の罰則を設けて取り締まってきた。しかし、指定薬物に指定されない物質を含み合法だとして販売されるドラッグがあとを絶たず、これらは脱法ドラッグあるいは違法ドラッグとよばれたが、現在は危険ドラッグで名称が統一されている。2014年(平成26)に薬事法が改正されて医薬品医療機器等法へと呼称変更されたが、それによると、指定薬物を、疾病の診断、治療、予防など医療等以外の目的で、製造、輸入、販売、授与所持、購入、使用することは禁止されており、違反した場合は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金(業として、指定薬物を製造、輸入、販売、授与、所持〈販売または授与の目的で貯蔵し、陳列した者に限る〉した場合は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金)などが科せられる。また、販売禁止となった指定薬物と同等以上に有害な疑いがある薬物を無承認無許可医薬品として規制し、全国で販売を禁止できるようにもなった。

 政府は、危険ドラッグの乱用が原因の重大事故が多発しているため、同じ2014年に「危険ドラッグの乱用根絶のための緊急対策」をまとめ、以降、その乱用防止と根絶に取り組んでいる。緊急対策の内容としては、危険ドラッグの実態把握と危険性についての啓発強化、指定薬物の迅速な指定、危険ドラッグにかかわる犯罪の取締り、規制のあり方の見直しなどである。さらに厚生労働省医薬・生活衛生局では、各都道府県で発見された無承認無許可医薬品を随時公開し、注意を喚起している。

[編集部 2017年2月16日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「危険ドラッグ」の意味・わかりやすい解説

危険ドラッグ
きけんドラッグ

覚醒剤大麻と似た幻覚作用などの神経効果をもつ物質が添加された薬物。政府が 2014年7月に呼称を改めるまでは「合法ハーブ」「脱法ハーブ」「脱法ドラッグ」などと呼ばれていた。添加薬物は新規に化学合成されたものが多く,規制当局が麻薬及び向精神薬取締法(麻薬取締法)上の麻薬と認定するまでに時間がかかり,その間は摘発されずに販売できたため「脱法」の名がついた。2004年東京都内で危険ドラッグを使用した男が錯乱し,同居女性を刺殺する事件が発生,これをうけて薬事法が改正され,2007年からは幻覚などの症状が出るおそれがあり,人体に有害とみられる物質であれば,政府が「指定薬物」として製造・販売を禁止できるようになった。しかし,指定薬物制度には限界があり,化学構造の一部を変えた新種がすぐ出回るため,規制強化後も危険ドラッグによる事件や事故は減らず,成分の強化による危険性の高まりも指摘された。厚生労働省は 2014年4月,薬事法を再改正し,従来の製造・販売に加え,所持や使用も禁止した。さらに同年 8月,指定薬物の追加手続きを簡素化し,指定薬物の公表から取り締まりまでの猶予期間を 10日間に短縮した。日本では 2014年時点で約 1400種類の薬物が規制されているが,中国ではほとんど規制がないため,原料となる有害な化学物質が中国で製造され日本に流入している。海外でも日本と同様の事件や事故が増加しており,国連薬物犯罪事務所 UNODCには,2013年,日本の危険ドラッグにあたる新精神作用物質 NPSの流通や,拡大状況などについて監視を強化するため,各国が情報交換する仕組みが設けられた。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

今日のキーワード

お手玉

世界各地で古くから行われている遊戯の一つ。日本では,小豆,米,じゅず玉などを小袋に詰め,5~7個の袋を組として,これらを連続して空中に投げ上げ,落さないように両手または片手で取りさばき,投げ玉の数や継...

お手玉の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android