麻薬のような薬物を反復使用していると、耐性ができて使用量が増え、やめることができない状況(依存状態)になるが、その際に急に薬物摂取をやめると現れるのが禁断症状である。体内にある薬物が急に消失するために現れる症状といわれ、離脱症状、退薬症状ともいい、その薬物を与えると症状は軽減したり消失する。禁断症状はモルヒネなどの麻薬で強く現れ、その症状は自律神経の嵐(あらし)ともいわれる。すなわち、散瞳(さんどう)、あくび、流涙、流涎(りゅうえん)(よだれ)、発汗、下痢、吐き気、嘔吐(おうと)、悪寒、発熱、心悸亢進(しんきこうしん)、不眠、筋けいれん、脱水症状などがみられ、苦しがって患者は薬を求める。麻薬中毒者は原則として麻薬の入手を絶ち、禁断症状に対する適切な処置を行うため、定められた病院に即時入院させて禁断療法を行う。
今日では薬物の依存状態を物質によって次のように分類している。
(1)モルヒネ型依存(ヘロイン、モルヒネ、オピアルなど)では禁断症状が顕著である。
(2)バルビツール型依存(バルビツール系や非バルビツール系の睡眠薬、抗不安薬など)およびアルコール型依存では、禁断症状として不眠、不安、手指振戦(手指のふるえ)、せん妄、けいれん発作などがみられる。
その他の(3)コカイン型依存、(4)カンナビス(大麻)型依存、(5)アンフェタミン型依存、(6)幻覚(剤)型依存、(7)吸入剤型依存、(8)カート型依存(カートは東アフリカ一帯に生える灌木(かんぼく)で、その葉をかむと幻覚剤を用いたかのように興奮する作用がある)、(9)ニコチン型依存などでは、禁断症状はあまり目だたない。禁断症状は、精神的依存よりも身体的依存の強い薬物(前述の(1)と(2))に強く現れる。
[保崎秀夫]
依存性薬物の慢性使用を急激に中断したときに現れる精神身体症状のこと。依存性薬物としては,モルヒネ,コカイン,アルコールおよびバルビツール酸誘導体,アンフェタミン,カンナビス,カート,幻覚剤(LSD,メスカリンなど),揮発性溶剤(シンナー,ボンド類)の8種類がある。このうち,モルヒネ,アルコール,バルビツール酸系薬物,これに準ずる鎮静剤や催眠剤,また精神安定剤の一部では,慢性的に乱用していて,突然に服薬中断をするか,減量することでも激しい禁断症状が現れる。精神症状としては意識混濁,すなわち,もうろう状態とせん妄状態で,しばしば不眠と不安がつのり,幻覚,とくに幻視や被害妄想などが出現する。身体的にも痙攣(けいれん)発作やよだれ,発汗,悪寒などの自律神経症状が現れ,重篤例では死に至る。完全な禁断でなくても起こるので,離脱症状,退薬症状ともいわれている。
→薬物依存
執筆者:加藤 伸勝
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