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危険ドラッグ きけんどらっぐ

知恵蔵の解説

危険ドラッグ

一般に覚醒剤大麻などの違法薬物とよく似た成分を含むドラッグを指すが、法的な定義はない。乾燥ハーブと化学物質を混ぜたいわゆる「脱法ハーブ」のほか、粉末液体状のものや錠剤も流通している。成分は覚醒剤に似たカチノン系(興奮系)と大麻に似た合成カンナビノイド系(鎮静系)に分けられるが、違法薬物と化学構造の一部が異なっていることから、薬事法指定薬物の対象から外れていた。そのため、国内で出回り始めた2007年頃から「脱法ドラッグ」「脱法ハーブ」「合法アロマ」などの名称で呼ばれてきた。
しかし違法薬物と同等、あるいはそれ以上の催眠・興奮・幻覚作用などを引き起こす成分を含み、治療法の確立していない薬物も多いため、違法薬物以上に危険という指摘もある。実際に、吸引・飲用者による交通事故や死亡事件が増え始め、12年には意識障害や嘔吐(おうと)・痙攣(けいれん)などによる緊急搬送の事例が、前年から10倍の469人に増えた(厚生労働省の調査)。14年6月には、池袋(東京都)で脱法ドラッグを吸引した男の乗用車が暴走、死者1人・重軽傷者7人を出すという事故が起こり、翌7月、厚労省と警察庁呼称を「危険ドラッグ」に改めた。「脱法」「合法」「ハーブ」という名称では危険性が伝わず、乱用を防止できないためという。
危険ドラッグの販売店はネットや路上で取引される覚醒剤や大麻と違って実店舗が多く、ハーブ専門店、雑貨店、アダルトグッズ店など多岐に渡る。お香・アロマ・鑑賞用などと称しての販売は規制対象にならないため、堂々と看板を掲げる店舗やネット通販業者も増えており、大都市を中心に259店が確認されている(13年末・警視庁の発表)。
厚生労働省は07年から「指定薬物」制度をスタートさせているが、主成分の化学構造の一部を変えて規制の網をくぐり抜ける「新製品」が後を絶たず、いたちごっこが続いている。このため13年2月から化学構造が似た物質を一括して規制する「包括指定」制度を導入し、更に14年1月には指定薬物の所持・使用を禁じる法改正も行った。しかし有毒成分を特定できなければ、指定薬物として規制できないため、検査・鑑定にかかる数カ月の間に販売者・使用者が姿を消したり、新たな「新製品」が登場したりする恐れが残る。国の対策が後手に回るなか、大阪府や愛知県など、独自の条例を制定し、規制対象を広げたり指定までの時間を短縮したりするといった対策を打ち出す自治体も増えている。

(大迫秀樹  フリー編集者 / 2014年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

危険ドラッグ

興奮や幻覚作用を引き起こす化学物質を含んだ粉末や液体で、植物片に付着させたものが主流。医薬品医療機器法(旧薬事法)で規制され、厚生労働省は現在1400種類以上を違法成分として指定している。

(2015-04-05 朝日新聞 朝刊 山形・1地方)

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デジタル大辞泉の解説

きけん‐ドラッグ【危険ドラッグ】

覚醒剤大麻など国が指定する規制薬物指定薬物と似た化学構造をもち、それらと同様の作用を人体にもたらすものをいう。
[補説]合法ドラッグ・脱法ドラッグ・違法ドラッグなどの呼称もあるが、こうした薬物の危険性を広く周知させるため、厚生労働省警察庁が新たな呼称として選定し、平成26年(2014)7月から用いられている。「合法ハーブ」などと称して販売されているが、指定薬物を含むものは薬事法により輸入・製造・販売・所持・使用などが禁止されている。

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知恵蔵miniの解説

危険ドラッグ

法律・条例などに基づく取締りの対象外である、麻薬と同様の効果を持つ物質のこと。脱法ドラッグ、合法ドラッグ、脱法ハーブなどと呼ばれていたが、2014年7月22日、警察庁と厚生労働省が新たな統一名称を公募した中から「危険ドラッグ」に決められた。主な危険ドラッグに「ラッシュ」「スパイス」「マジックマッシュルーム」などがあり、ハーブ・お香・バスソルト・研究用試薬・観賞用といった名目で売られることが多い。05年2月に「事実上人体への摂取が目的とされていると判断される場合は、薬事法上の無承認・無許可医薬品として取締りの対象とする」ことが通達され、07年4月にも取締り強化のため薬事法が改正された。さらに13年3月、成分が類似している薬物を包括的にとらえ「指定薬物」として取り締まれるようになった。しかし、合法な新物質を使った危険ドラッグが次々と販売されており、日本で危険ドラッグを用いて病院に救急搬送された患者数は、10年1人、11年48人、12年469人と激増している。14年6月には、東京・池袋の繁華街で危険ドラッグを摂取した男の運転する車が歩道を暴走し1人死亡・7人が重軽傷を負うなど、重大事件も続発しており、大きな社会問題となっている。

(2014-7-24)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

危険ドラッグ
きけんドラッグ

覚醒剤や大麻と似た幻覚作用などの神経効果をもつ物質が添加された薬物。政府が 2014年7月に呼称を改めるまでは「合法ハーブ」「脱法ハーブ」「脱法ドラッグ」などと呼ばれていた。添加薬物は新規に化学合成されたものが多く,規制当局が麻薬及び向精神薬取締法(麻薬取締法)上の麻薬と認定するまでに時間がかかり,その間は摘発されずに販売できたため「脱法」の名がついた。2004年東京都内で危険ドラッグを使用した男が錯乱し,同居女性を刺殺する事件が発生,これをうけて薬事法が改正され,2007年からは幻覚などの症状が出るおそれがあり,人体に有害とみられる物質であれば,政府が「指定薬物」として製造・販売を禁止できるようになった。しかし,指定薬物制度には限界があり,化学構造の一部を変えた新種がすぐ出回るため,規制強化後も危険ドラッグによる事件や事故は減らず,成分の強化による危険性の高まりも指摘された。厚生労働省は 2014年4月,薬事法を再改正し,従来の製造・販売に加え,所持や使用も禁止した。さらに同年 8月,指定薬物の追加手続きを簡素化し,指定薬物の公表から取り締まりまでの猶予期間を 10日間に短縮した。日本では 2014年時点で約 1400種類の薬物が規制されているが,中国ではほとんど規制がないため,原料となる有害な化学物質が中国で製造され日本に流入している。海外でも日本と同様の事件や事故が増加しており,国連薬物犯罪事務所 UNODCには,2013年,日本の危険ドラッグにあたる新精神作用物質 NPSの流通や,拡大状況などについて監視を強化するため,各国が情報交換する仕組みが設けられた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

危険ドラッグ
きけんどらっぐ

中枢神経系の興奮や抑制あるいは幻覚を引き起こす作用をもち、人体に危害を及ぼす可能性のある危険な薬物。依存性の高い薬物で、禁断症状から乱用を繰り返すことも多い。厚生労働省ではこれらの薬物を指定薬物に指定し、販売した場合の罰則を設けて取り締まってきた。しかし、指定薬物に指定されない物質を含み合法だとして販売されるドラッグがあとを絶たず、これらは脱法ドラッグあるいは違法ドラッグとよばれたが、現在は危険ドラッグで名称が統一されている。2014年(平成26)に薬事法が改正されて医薬品医療機器法へと呼称変更されたが、それによると、指定薬物の製造や輸入および販売ならびに陳列に加えて、購入や所持および使用も禁止され、違反した場合は3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金などが科せられる。また、販売禁止となった指定薬物と同等以上に有害な疑いがある薬物を無承認無許可医薬品として規制し、全国で販売を禁止できるようにもなった。
 政府は、危険ドラッグの乱用が原因の重大事故が多発しているため、同じ2014年に「危険ドラッグの乱用根絶のための緊急対策」をまとめ、以降、その乱用防止と根絶に取り組んでいる。緊急対策の内容としては、危険ドラッグの実態把握と危険性についての啓発強化、指定薬物の迅速な指定、危険ドラッグにかかわる犯罪の取締り、規制のあり方の見直しなどである。さらに厚生労働省医薬・生活衛生局では、各都道府県で発見された無承認無許可医薬品を随時公開し、注意を喚起している。[編集部]

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