(原始共同態Urgemeinschaft、原生的共同体urwüchsige Gemeinde、本源的共同組織ursprüngliche Gemeinwesen、3語ともスペルはドイツ語) 原始社会の単位。無数の個別例による差異をもつが、次の一般特徴をもつ。定着経済(牧畜・農耕)以前の人間集団は基本的に血縁的団体で、この集団は狩猟・漁労などの生産チームであり、かつ消費団体でもある。労働用具(弓矢、銛(もり)、槍(やり)など)は個人的使用に適しているのでおそらく初めから個々人の所有であったが、主要な生産手段である大地や漁場は共同体が、他の団体の利用を排除するという意味で領有する。居住用建物は共同体成員全体を収容する長大なものであるか、分散式の場合は簡単なものであったから、建造物も私有の対象として取るに足らない。消費物資は個人に分配されるよりも集団によって直接消費される(共同炊事)。生産の指導者は経済的搾取をなすに至らない。狩猟・漁労であっても居住の安定性が増大するにつれて原始共同体は地縁的性格を帯びるが、牧畜・農耕の開始とともに定住性は飛躍する。農耕そのものが共同体的に行われるか、そうでなくとも水利など農業の前提に共同労働がなされる所では、古い共同体は農耕共同体に変形し、この種の共同体は必要な分業のほとんどすべてをその内部に組織しているのできわめて安定性が高く、解体は緩慢で、長く社会全体に共同体的特徴を刻印づける。政治的支配者は経済的に個々の、また全体としての共同体を指導するため、搾取はイデオロギー的に隠蔽(いんぺい)される(アジア)。牧畜的農業の行われる所では、古い共同体は土地占取の前提になっており、共同体の土地も存在するが、農業は小規模な家を単位とするため、家畜と耕地は個別家族の所有となる。このため古い共同体は解体され、経済的に自給的な自由な小土地所有農民が、軍事的防衛のために都市に結集し(ギリシア、ローマ)、あるいは相互の利害調整のために集会をもち(ゲルマン)、新しい共同体を構成する。
[熊野 聰]
… このような共同体の存在は,およそ考えられるかぎりで最も原始的な経済段階にある採集狩猟民のあいだに,現実にみられるものである。これを原始共同体もしくは共同体の原初形態と呼ぶことができよう。この原始共同体にあっては,一定地域のうえに生活の各種の共同組織が累積している。…
※「原始共同体」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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