厩火事(読み)ウマヤカジ

デジタル大辞泉 「厩火事」の意味・読み・例文・類語

うまやかじ〔うまやクワジ〕【厩火事】

落語火事で馬よりも家来の身を案じた孔子故事にならい、髪結い女房が、亭主愛情を試そうと、大切な瀬戸物を割る。亭主は女房の身を案じるが、それはけがをされては、自分が食い上げになるからであった。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「厩火事」の意味・わかりやすい解説

厩火事
うまやかじ

落語。『論語』から出た教訓噺(ばなし)。夫婦げんかの絶えない髪結いのお崎は、亭主の本心が知りたくて仲人(なこうど)に話す。仲人は、唐土(もろこし)の孔子は厩の火事で愛する白馬を焼死させながらも、馬にかまわず家来の安否を尋ねたため、家来は孔子を心から尊敬したという話と、麹町(こうじまち)のさる屋敷の旦那(だんな)は、奥方がたいせつな瀬戸物の鉢を持って階段から滑り落ちたときに、鉢のほうばかり気にして奥方の体のことを少しも聞かなかったという話をする。そして、お前の亭主も、お前が瀬戸物を割ったときに、もしも瀬戸物ばかり気にしているようだったら別れてしまえと教えた。お崎は帰宅して瀬戸物を壊す。亭主は驚いて「けがはなかったか」と聞く。「まあ、ありがたい。お前さん、そんなにあたしの体がだいじかい」「あたりめえじゃねえか、けがしてみねえ、あしたっから遊んでて酒飲むことができねえ」。古い江戸の噺であり、8代目桂文楽(かつらぶんらく)が研究を重ねて完成した。

[関山和夫]

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改訂新版 世界大百科事典 「厩火事」の意味・わかりやすい解説

厩火事 (うまやかじ)

落語。若い亭主を養う髪結おさきは亭主の真意を知りたがる。仲人は,厩火事で愛馬を失った孔子が家来の身だけを案じた美談と,奥方の安否よりも秘蔵の皿を珍重した麴町殿様の薄情話とをし,亭主の実意を試すために彼の愛蔵の皿を割れと教える。おさきが皿を割ると亭主が彼女の身を案じるのでよろこぶと,〈手でも怪我してみねえ。明日から遊んでて酒が飲めねえ〉。落ちはとたん落ち
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デジタル大辞泉プラス 「厩火事」の解説

厩火事

古典落語の演目のひとつ。「厩焼けたり」とも。八代目桂文楽が得意とした。オチは逆さオチ。主な登場人物は、夫婦者。題名は孔子の故事にちなむ。

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