落語。『論語』から出た教訓噺(ばなし)。夫婦げんかの絶えない髪結いのお崎は、亭主の本心が知りたくて仲人(なこうど)に話す。仲人は、唐土(もろこし)の孔子は厩の火事で愛する白馬を焼死させながらも、馬にかまわず家来の安否を尋ねたため、家来は孔子を心から尊敬したという話と、麹町(こうじまち)のさる屋敷の旦那(だんな)は、奥方がたいせつな瀬戸物の鉢を持って階段から滑り落ちたときに、鉢のほうばかり気にして奥方の体のことを少しも聞かなかったという話をする。そして、お前の亭主も、お前が瀬戸物を割ったときに、もしも瀬戸物ばかり気にしているようだったら別れてしまえと教えた。お崎は帰宅して瀬戸物を壊す。亭主は驚いて「けがはなかったか」と聞く。「まあ、ありがたい。お前さん、そんなにあたしの体がだいじかい」「あたりめえじゃねえか、けがしてみねえ、あしたっから遊んでて酒飲むことができねえ」。古い江戸の噺であり、8代目桂文楽(かつらぶんらく)が研究を重ねて完成した。
[関山和夫]
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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