以心伝心(読み)イシンデンシン

デジタル大辞泉 「以心伝心」の意味・読み・例文・類語

いしん‐でんしん【以心伝心】

仏語。仏法の奥義を、言葉や文字を借りず師の心から弟子の心に伝えること。主に禅宗で用いる。→不立文字ふりゅうもんじ
無言のうちに心が通じ合うこと。「以心伝心間柄
[補説]「意心伝心」と書くのは誤り。
[類語]呼応意気投合合意コンセンサス息が合う反りが合う反り馬が合う気が合う肌が合う琴瑟きんしつ相和す打てば響くつうかあ応える共鳴同感共感拈華微笑ねんげみしょう心を合わせる心を一にする心を通わす心が通う気が置けない胸襟を開く腹を割る心を開く心を許す気を許す肝胆相照らす心を交わす心を以て心に伝う

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精選版 日本国語大辞典 「以心伝心」の意味・読み・例文・類語

いしん‐でんしん【以心伝心】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 仏語。ことばでは表わせない悟りや真理を心から心へと伝えること。主として禅家で用いる。
    1. [初出の実例]「胡蘆藤の胡蘆藤をまつふは、仏祖の仏祖を参究し、仏祖の仏祖を証契するなり。たとへばこれ以心伝心なり」(出典:正法眼蔵(1231‐53)葛藤)
  3. 無言のうちに心が互いに通じ合うこと。わざわざ口で説明しなくても、自然に相手に通じること。
    1. [初出の実例]「或は古人の書を読み或は今人の言行を聞見して其徳行に倣ふ可きのみ。所謂以心伝心なるものにて」(出典:文明論之概略(1875)〈福沢諭吉〉三)
  4. 自由恋愛、自由結婚をいう、学生仲間の隠語。〔常用モダン語辞典(1933)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「以心伝心」の意味・わかりやすい解説

以心伝心 (いしんでんしん)

心をもって,心に伝えること。仏法の義が,師と弟子(資)との面面相対することによって,師の心から弟子の心に直接伝えられることをいう。釈尊は,霊鷲山(りようじゆせん)において,8万の大衆を前にして金波羅華をかかげ拈(ねん)じたが,それをみた大衆のうち摩訶迦葉(まかかしよう)ただ一人がその意を悟って破顔微笑し,摩訶迦葉は釈尊から正法を授受されたといわれ,そこに以心伝心のあったことが示されている。この故事を拈華微笑(ねんげみしよう)という。禅門では,ことばや文字,経論によることなく,師資相対して心から心に禅の大法を伝えてきた。中国に禅を伝えた達磨は,以心伝心,不立文字(ふりゆうもんじ)をもって真の仏法の正法を伝えることを強調したといわれる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「以心伝心」の意味・わかりやすい解説

以心伝心
いしんでんしん

禅宗の用語で、ことばや文字を用いずに仏法の極意が師から弟子へと伝えられること。釈尊が霊鷲山(りょうじゅせん)で8万の大衆に向かい華(はな)を拈(ひね)ってみせたところ、弟子のなかで摩訶迦葉(まかかしょう)1人が釈尊の心を悟り微笑したという故事(拈華微笑(ねんげみしょう))に基づいている。これは、悟りの内容がそのまま師から弟子へと伝授されることを端的に示す寓話(ぐうわ)で、以心伝心の語は不立文字(ふりゅうもんじ)、教外別伝(きょうげべつでん)とともに、禅門の標語となった。転じて、説明不可能な微妙な事柄が相手に伝えられる意にも用いられる。

[石川力山]

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四字熟語を知る辞典 「以心伝心」の解説

以心伝心

無言のうちに心が互いに通じ合うこと。わざわざ口で説明しなくても、自然に相手に通じること。

[使用例] 「一杯いかがです」と私に杯を差したので、辰巳屋のおかみも以心伝心というやつだ[井伏鱒二駅前旅館|1956~57]

[使用例] ロベールがジャンマリーの切符販売機窃盗事件のことを連想したことが彼女には以心伝心でわかった[加賀乙彦フランドルの冬|1967]

[解説] 「心を以て心に伝う」の意味。本来仏教、特に禅宗で、仏法の真髄を言葉を用いずに師の心から弟子の心に伝えることを意味します。

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ことわざを知る辞典 「以心伝心」の解説

以心伝心

無言のうちに心が互いに通じ合うこと。わざわざ口で説明しなくても、おのずから相手に通じること。

[使用例] 禅家で無言の問答をやるのが以心伝心であるなら[夏目漱石*吾輩は猫である|1905~06]

[解説] 本来は仏教で、特に禅宗で、ことばでは表せない悟りや真理を心から心へと伝えること。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「以心伝心」の意味・わかりやすい解説

以心伝心
いしんでんしん

禅宗用語。元来は言葉などを媒介せずに悟りの内容をそのまま人に伝達すること。唐の禅僧,慧能に始る言葉。

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