反ユダヤ主義(読み)はんユダヤしゅぎ

百科事典マイペディアの解説

反ユダヤ主義【はんユダヤしゅぎ】

反セム主義(アンチ・セミティズム)ともいう。宗教的・経済的・人種的理由からユダヤ人を差別・排斥しようとする考え方。古くから存在するが,とくに中世キリスト教社会において,12―13世紀のラテラノ公会議でユダヤ教徒の衣服と居住区(ゲットー)が決められるなど,〈内なる敵〉として差別が進んだ。ロシアのポグロムなど,ユダヤ人への大衆の直接的暴力も繰り返された。19世紀になると,ゴビノーJ.A.Gobineau,チェンバレンH.S.Chamberlainに代表される,ユダヤ人を生物学的に劣ったセム人種とする考え方(反セム主義)を生み,ドイツ,オーストリアなどでは政治運動の一要素にまでなった。特にナチスはこの主義を掲げ,第2次大戦中数百万のユダヤ人を殺した。→強制収容所
→関連項目ゲッベルスナチズムネオ・ナチズムヒトラーわが闘争

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世界大百科事典 第2版の解説

はんユダヤしゅぎ【反ユダヤ主義 anti‐Semitism】

ユダヤ教徒およびユダヤ人への敵意,憎悪,迫害,偏見を意味する語。反ユダヤ主義は,古くは聖書時代からみられるが,19世紀になって,アンチ・セミティズムという語が暗示しているように,人種説に基づく新しい反ユダヤ主義が出現した。ここに,反ユダヤ主義は,従来の宗教を主因とする伝統的な反ユダヤ主義と新たな人種説に基づく反ユダヤ主義(狭義のアンチ・セミティズム)とに区別されうる。 旧約聖書の《エステル記》に,離散したユダヤ人(ディアスポラ)に対する敵意に満ちた反ユダヤ的態度がすでに記述されている。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

反ユダヤ主義
はんゆだやしゅぎ

ユダヤ人に対する差別主義、とくに集団的・組織的迫害行動のこと。原語はanti-Semitismであるが、Semiteとはこの場合、セム人に属するユダヤ人をさしている。この語自体は比較的新しく、1879年、ユダヤ人との宗教的対立以上に民族的・社会経済的敵対性を強調するために、ウィルヘルム・マルが用いて以来広まったが、迫害行動そのものは、「ディアスポラ」(ユダヤ人の離散)以来さまざまな形で行われ、ヨーロッパ各地において、いわゆるユダヤ人問題を引き起こしてきた。[田北亮介]

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世界大百科事典内の反ユダヤ主義の言及

【アンチ・セミティズム】より

…字義どおりには反セム人主義であるが,一般にはひろく反ユダヤ主義の意味で用いられ,またとくに19世紀末以降ドイツ,フランスなどユダヤ教徒解放が一応完了した諸国に起こり,中世以来の伝統的なユダヤ教徒差別とは性格を異にする近代反ユダヤ主義をさすことも多い。18世紀末までのヨーロッパでは,ユダヤ人とはもっぱらユダヤ教徒のことであり,ユダヤ教団への所属によって規定される身分であった。…

【ヒトラー】より

…21年党首に就任し,党指導の全権を掌握する。ベルサイユ条約の廃棄,激烈な反ユダヤ主義を唱えて注目をひく。23年11月ミュンヘン一揆を企てて失敗,党は解散され,自身は禁固刑に処せられる。…

【ユダヤ人】より

…ところが19世紀末にいたってこの〈ユダヤ人〉規定をくつがえし,これをもっぱら出生すなわち血に基づく〈人種〉集団としてみようとする考え方が現れた。直接には1870年代の大不況の影響のもとで没落の危機感にとらえられた中部ヨーロッパの中間層の間で,資本主義社会の矛盾をあげて〈ユダヤ人〉=セム人に帰そうとする反ユダヤ主義者のこの主張は強い吸引力を発揮し,とくにドイツ,オーストリア,フランスでこの人種論的反ユダヤ主義(アンチ・セミティズム)は急速な広がりをみせた。ここにユダヤ教徒であるかどうかとは無関係におよそひとたびその血をうけた者は,信仰のいかんにかかわらずつねに〈ユダヤ人〉であり続けるという観念が成立したのである。…

※「反ユダヤ主義」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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