六訂版 家庭医学大全科 「口腔ケアと歯周病」の解説
口腔ケアと歯周病
こうくうケアとししゅうびょう
Oral care and periodontitis
(お年寄りの病気)
口腔ケア
口腔ケアとは、狭い意味では口腔清掃(口のなかの汚れ、歯に付着した汚れを除くこと)を指し、広い意味では口腔清掃だけではなく、加齢や病気によって衰えてきた口の機能のリハビリテーションなども含みます。口腔ケアの目標は生活の質の維持・向上にあります。
口腔ケアにはセルフケア、介助者が行うケア、専門的口腔ケアがあります。
健康な人にとっての口腔ケアは基本的にはセルフケアであり、その主な目的はう蝕(しょく)(むし歯)と歯周病(
要介護者の口のなかは汚れやすいのですが、自分では汚れをとりにくい状態になっています。したがって、本人による歯みがきを基本にして、本人がみがけない部位はみがき残しをなくすために介護者が歯みがきをしてあげることが大切です。
要介護者の口のなかの粘膜も汚れやすくなります。
口から食べなくなっても口のなかの清掃は必ず行うことが必要です。嚥下が上手にできない人に清掃を行うのは難しいので、歯科医師や歯科衛生士から指導を受けてから清掃を行うことが大切です。
要介護者に対しては歯科医師や歯科衛生士による専門的口腔ケアも大切です。具体的には口腔保健指導、専門的な口腔清掃、口腔機能の維持・回復のための指導・助言、歯科口腔領域の介護援助などです。
要介護者に対する口腔ケアの意義として、う蝕や歯周病の予防だけではなく、口を清潔に維持することによる
健康な人にとっても、要介護者にとっても、口の汚れを的確に除くのは難しいものです。また介護者が要介護者の口腔ケアを適切に行うのも難しいものです。種々の方法や清掃用品のなかから適切なものを選択する必要があります。歯科医師や歯科衛生士による指導と定期的なチェックを受けて、口の健康を保つ必要があります。
高齢者の口の状態
幼少からの清掃習慣、歯科疾患(う蝕や歯周病など)とその治療などの結果として現在の口のなかの状態があります。
要介護者の口のなかの特徴として、高度な汚れ、う蝕の多発、歯周病、適合していない
高齢者の口のなかが汚れやすい理由として、種々のことが考えられますが、そのひとつに唾液の減少があげられます。唾液は口のなかをきれいにするはたらきがあります。老化や薬剤の副作用などで唾液が減少すると、口のなかが汚れやすくなります。
噛む機能の低下が起こると、噛みにくい繊維質の食品を避け、軟らかい食品を好むようになります。軟らかい粘着性の食品を中心とした食事の場合には、食品が歯の表面などに残り、汚れやすくなります。
また、脳血管障害後遺症によって頬などに麻痺が生じると、その部位に食物の残留が起こり、本人はそれに気づかないことがあります。
つまり、①脳血管障害の後遺症やパーキンソン病などの疾患による機能障害、②加齢に伴う手指や視力、その他の機能低下、③認知症などによる精神機能の低下などにより、口の健康管理が著しく低下することになります。
高齢者の歯周病
高齢者の特殊事情として、糖尿病、
治療とケアのポイントとして、
高齢者のう蝕
要介護者では
これらの治療とケアのポイントとして、歯垢の除去と食生活の改善(砂糖を含んだ飲食物の摂取制限)が重要です。やはり適切な口腔ケアが基本となります。
高齢者の口腔機能
高齢者は老化や
下山 和弘
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報