舌苔(読み)ぜったい(英語表記)Tongue coat

精選版 日本国語大辞典 「舌苔」の意味・読み・例文・類語

ぜっ‐たい【舌苔】

〘名〙 種々の疾患のさいに舌の表面に生じるこけ状の付着物。特に胃腸疾患、熱性疾患のある場合に生じやすい。〔医語類聚(1872)〕

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デジタル大辞泉 「舌苔」の意味・読み・例文・類語

ぜっ‐たい【舌×苔】

舌の粘膜の上面に生じるコケ状の付着物。

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六訂版 家庭医学大全科 「舌苔」の解説

舌苔
ぜったい
Tongue coat
(口・あごの病気)

どんな病気か

 舌の表面に白色または黄褐色、または黒色(こけ)状に見えるものをいいます。

 舌苔は唾液(だえき)分泌腺(ぶんぴせん)の機能状態や分泌量、分泌液の状態、口腔内常在菌(こうくうないじょうざいきん)、体調などの影響を受けます。また、唾液腺交感神経と副交感神経の二重支配を受け、自律神経の影響から、内臓神経との関連が強く、内臓の状態を反映すると考えられます。口腔は上部消化管の性状をもつと考えてよく、胃粘膜(いねんまく)の状態が良くない場合には、一般に舌苔は多く厚くなります。味覚や感覚を低下させることで食欲を減らして、食物摂取を減少させることにより、胃腸を保護する働きがあるといわれています。

 健康な状態では舌苔は少なく薄くなりますが、適度な量の舌苔は水分の保持と健全な細菌の層を築き、細胞や味蕾(みらい)を保護します。生体は常に恒常性(こうじょうせい)を保つ機構がありますが、この舌苔のバランスも口腔内細菌や免疫反応が巧妙に関与して、恒常性の機構をもたらしています。

原因は何か

 舌苔の異常の原因は①唾液量分泌不足による口の渇き、②免疫力の低下(かぜ、睡眠不足)、③口呼吸、④食べ残しが多い歯みがき、⑤喫煙、⑥加齢、⑦ストレス(緊張)、⑧全身的疾患(熱性疾患、糖尿病シェーグレン症候群自律神経失調症十二指腸潰瘍)、⑨薬の副作用があります。

症状の現れ方

 健康な人でも体調により舌苔の色や量が変化します。通常の量では口臭に影響を与えません。舌苔が厚くなると違和感、味覚異常を覚え、口臭に影響を与えます。

治療の方法

 治療は、原因疾患があれば治療しますが、舌苔自体は治療の必要はありません。へらなどを使ってこすり取るようなことは、粘膜を傷つけることになり、他の病気につながってしまいます。

 規則正しい生活をすることと舌をしっかり使うこと(十分な咀嚼(そしゃく)と会話)、新鮮な唾液の分泌を図ることが大切です。介護が必要な老人など自分で歯みがきができない場合は、舌の表面の汚れを軽くとってあげます。

三浦 一恵

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家庭医学館 「舌苔」の解説

ぜったい【舌苔 Coated Tongue】

[どんな病気か]
 舌の表面が、白黄色から褐色に汚れた状態をいいます。
 これは、舌の炎症などのために白血球(はっけっきゅう)、リンパ球、剥離(はくり)した上皮細胞(じょうひさいぼう)のくず、細菌や真菌(しんきん)、唾液(だえき)の成分、食物残渣(しょくもつざんさ)などが堆積(たいせき)するかたちで舌の表面に付着し、形成されたものです。
 また、舌の表面には糸状乳頭(しじょうにゅうとう)という突起がありますが、この糸状乳頭が異常に長くなった状態も、ときに舌苔と呼ばれることがあります。高度になると、舌の表面にあたかも毛が生えたように見えるので、多くの場合、この状態は毛舌(もうぜつ)(「毛舌/黒毛舌」)と呼ばれます。
 舌苔と毛舌とが、同時に存在することも珍しくありません。
[原因]
 全身の病気、抗生物質副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬などの使用が関係している場合がありますが、舌の古くなった粘膜(ねんまく)が生理的に剥脱し、堆積しただけの場合もあります。
[治療]
 基本的な治療は、口の中の清潔を保つことです。
 細菌が感染している場合には、消毒効果のある含嗽剤(がんそうざい)(うがい薬)でうがいをし、真菌が感染している場合には、抗真菌薬を含んだ含嗽剤を加えることもあります。
 また、薬剤が原因と考えられる場合には、その薬剤の使用を中止します。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「舌苔」の意味・わかりやすい解説

舌苔
ぜったい

舌背面中央部から後方に付着する灰白色ないし褐色の柔軟偽膜様の苔(たい)状物で、剥離(はくり)した角化上皮、白血球、微生物、唾液(だえき)成分、食物残渣(ざんさ)およびその色素などの混合物である。胃腸の疾患、全身の高熱性疾患、急性・慢性の口内炎、咽頭(いんとう)炎、扁桃(へんとう)炎、肺炎、急性伝染病など諸種の疾患に際して発生する。また、軟らかい食事の摂取、口腔(こうくう)清掃不良、唾液分泌減少、あるいは口呼吸の人にもみられることが多い。一般に性差はなく、幼若年者に少なく、年齢とともに増加するが、高年齢層になると、また減少する傾向がある。治療は、原因疾患の治療とともに、口腔内の清掃消毒を口内炎の処置に準じて行う。もし常用している薬剤があれば、その薬剤の使用停止、または変更を行う必要がある。

[矢﨑正之]

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改訂新版 世界大百科事典 「舌苔」の意味・わかりやすい解説

舌苔 (ぜったい)
coating of tongue

種々の疾患に際し,舌の表面にできる付着物。多くは舌背中央部に付着し,胃腸などの消化器疾患,熱性疾患,口内炎,咽頭炎,扁桃炎などの際に多くみられる。付着物は角化上皮,粘膜上皮,白血球,微生物,食物残渣などからなる。舌苔は口腔の脱水,炎症などによって生じる。
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百科事典マイペディア 「舌苔」の意味・わかりやすい解説

舌苔【ぜったい】

舌の表面をおおう灰白色,または黄色,黒褐色などのコケ様のもの。新陳代謝により生じた脱落細胞や食物残渣(ざんさ)などからなる。口腔の脱水,炎症などによって生じる。胃・腸疾患の際にみられることが多く,その疾患特有の性状を呈することもあるので,疾患の鑑別診断に有用。
→関連項目腸チフス

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「舌苔」の意味・わかりやすい解説

舌苔
ぜったい
coat of the tongue

舌の表面が苔状のものでおおわれている状態をいう。口腔内が乾燥しているとき (口呼吸時など) に生じやすい。喫煙家,便秘時,消化器疾患,熱性疾患,脱水状態などでもしばしば認められる。白色のことが多いが,褐色や黒色のこともある。褐色や黒色が強くなって毛髪状に見えることがあるが,これは真菌の感染によるもので,抗生物質の長期使用時などにみられる。

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