可愛(読み)かわゆい

精選版 日本国語大辞典「可愛」の解説

かわゆ・い かはゆい【可愛】

〘形口〙 かはゆ・し 〘形ク〙 (「かわはゆし(顔映)」の変化した語)
① きまりがわるい。はずかしい。
今昔(1120頃か)二六「髪のたそたそとして咲気(をかしげ)なるを見に、かはゆく難為(しがたく)思へ共」
② (物をまともに見ていられない意から) あわれで、人の同情をさそうようなさまである。かわいそうだ。ふびんだ。気の毒だ。いじらしい。
※発心集(1216頃か)七「哀にかなしき事限りなし。先づさてまぢかく見ん事もかはゆき様なれば」
※徒然草(1331頃)一七五「年老い袈裟かけたる法師の、小わらはの肩をおさへて、聞えぬ事ども言ひつつ、よろめきたる、いとかはゆし」
③ (女、子どもなど)愛らしい。愛らしく感じられる。また、甘えの気持をこめて愛人などをいとしいと思うさまにいう。かわいい。
※玉塵抄(1563)一九「呉唐が子をかわゆう思ふことは鹿と人とかわることないぞ」
※鉄眼禅師仮名法語(1691)三「にくしとおもふも、かはゆしとおもふも、みなみづからがおもひなしなり」
④ 小さくて、やさしく扱ってやりたい気持を起こさせるさまである。好ましく小さい。かわいい。かわいらしい。
俳諧・文化句帖‐補遺(1806‐11)「蝶とんでかはゆき竹の出たりけり」
[語誌](1)早い例は「今昔」にみられるが、同文献に「かははゆし」という語形も存在し、どちらも「…するに気がひける、恥ずかしい」など①の意で用いられており、そこから「顔映ゆし」という語源が想定されている(「はゆし」は「面映ゆし」「目映ゆし」のそれと同じ)。
(2)「見るに忍びない」の意から気の毒、ふびんという②の意が生じ、中世の用例の大部分はこの意で用いられている。中世後半に至って、女、子どもなど弱者への憐みの気持から発した情愛の念を示す③の意を派生させ、近世以降はこの意味が優勢となる。この間、語形は「かわゆい」の変化した「かわいい」が生じ、それに伴って漢語「可愛」との関連で「可愛い」という表記がみられるようになる。
(3)近世後半ではふびんの意は消失し、愛らしいの意のみとなり、さらに愛すべき小さい様という④の意の属性形容詞用法も出現する。
かわゆ‐が・る
〘他ラ四〙
かわゆ‐げ
〘形動〙
かわゆ‐さ
〘名〙

かわい・い かはいい【可愛】

〘形口〙 (「かわゆい」の変化した語)
① あわれで、人の同情をさそうようなさまである。かわいそうだ。ふびんだ。いたわしい。
※史記抄(1477)八「罪もない父母や妻子や同産の兄弟まてつみせらるるはかわいい事ぞ」
浄瑠璃・丹波与作待夜の小室節(1707頃)中「あすの日中にきらるげな、かはいひ事をしまする」
② 心がひかれて、放っておけない、大切にしたいという気持である。深く愛し、大事にしたいさまである。いとしい。
※虎明本狂言・盗人の子(室町末‐近世初)「おやのみになっては、むさひ子をもってさへかはいひに」
※滑稽本・浮世風呂(1809‐13)前「にくい母(おっかあ)めだの。うなうなをしてやらう。可愛(カワイイ)坊に灸(あっつ)ウすえて」
③ 愛すべきさまである。かわいらしい。かわゆい。
(イ) (若い女性や子どもの、顔や姿が)愛らしく、魅力がある。
※人情本・春告鳥(1836‐37)三「手めへに似たらさぞかはいひのが出来るだらう」
(ロ) (子どものように)邪心がなく、殊勝なさまである。いじらしい。
※都会(1908)〈生田葵山〉不安「妻が良人に見せんが為めに飾る可愛い心や」
④ (物や形が)好ましく小さい。また、小さくて美しい。かわゆい。
※雑俳・柳多留‐九八(1828)「かはいい虫が来てはさす𦜝の下」
※雪国(1935‐47)〈川端康成〉「軒端の可愛い氷柱」
⑤ とるに足りない。あわれむべきさまである。やや侮蔑を含んでいう。
※史記抄(1477)五「言は、秦に諸矦を比すれば天子の下で郡県の主君ほどの事ぞ。かわいいものぞ」
かわい‐が・る
〘他ラ五(四)〙
かわい‐げ
〘形動〙
かわい‐さ
〘名〙

かわい かはい【可愛】

(形容詞「かわいい」の語幹)
① あわれで人の同情をさそうようなさま。かわいそう。ふびん。かわゆ。かあい。
※玉塵抄(1563)一四「いらぬ足を多うもったぞざうさなことぞかわいの者やと云たぞ」
② (女、子どもなど)愛らしいさま。愛らしく感じるさま。また、甘えの気持をこめて愛人などをいとしく思うさま。名詞に直接つづけて用いる場合もある。かわゆ。かあい。
※浄瑠璃・曾根崎心中(1703)道行「いとしかはいとしめて寐(ね)し」
※二人女房(1891‐92)〈尾崎紅葉〉中「忌々しい婆めと勃然(むっ)とはしたれど、可愛(カハイ)娘の姑」
[補注]「かわいい」の省略形とみるべき用法もある。

かわゆ かはゆ【可愛】

(形容詞「かわゆい」の語幹。感動表現とともに用いられる場合が多い)
① はずかしく感じているさま。
※狭衣物語(1069‐77頃か)一「あなかはゆの色好みや」
② あわれで、人の同情をさそうようなさま。かわいそう。ふびん。かわい。
※三国伝記(1407‐46頃か)一〇「此盲鳥の疲痩飢渇せるを見て物を哀まば是に過ぎたる事有べからず。穴かはゆやとて」
③ (女、子どもなど)愛らしいさま。愛らしく感じるさま。また、甘えの気持をこめて愛人などをいとしく思うさま。かわい。
※俳諧・やつこはいかい(1667)序「かはゆの清十郎がなれのはて、いざ追善に俳諧の一巻をあつめん」

かあい【可愛】

(形容詞「かあいい」の語幹。形容詞「かあいい」の略と見るべき用法もある)
① あわれで、人の同情を誘うようなさま。ふびん。かわい。
※雑俳・軽口頓作(1709)「ねぢむいて・かあいや坊を置土産」
② (女・子供など) 愛らしいさま。愛らしく感じるさま。また、甘えの気持をこめて、愛人などをいとしく思うさま。かわい。
※歌舞伎・鳴神(1742か)「つひとけ安き繻子の帯、二ツまくらのあつかひに、月もいるさの夜明のからす、可愛(カアイ)可愛(カアイ)と引よせて」

かあい・い【可愛】

〘形口〙 (「かわゆい」の変化した「かわいい」のさらに変化したもの。「愛」や「哀」を連想したところからの変化か) =かわいい(可愛)〔和英語林集成(初版)(1867)〕
かあい‐が・る
〘他ラ五(四)〙
かあい‐げ
〘形動〙
かあい‐さ
〘名〙

かわよ・い かはよい【可愛】

〘形口〙 かはよ・し 〘形ク〙 「かわゆい(可愛)」の変化した語。
※杜詩続翠抄(1439頃)八「天下満々た小人はかはよい事よと云意也」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉「可愛」の解説

かわい〔かはい〕【可愛】

《形容詞「かわいい」の語幹。また、「かわいい」の省略形とも》
愛らしく感じるさま。いとしく思うさま。
忌々いまいましいばばめと勃然むっとはしたれど、―娘のしゅうと」〈紅葉・二人女房〉
かわいそうに思うさま。ふびん。
くるわばばになる吾妻、―と思うて下されと」〈浄・寿の門松

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

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