台湾民主国(読み)たいわんみんしゅこく(英語表記)Tái wān mín zhǔ guó

改訂新版 世界大百科事典 「台湾民主国」の意味・わかりやすい解説

台湾民主国 (たいわんみんしゅこく)
Tái wān mín zhǔ guó

日清戦争直後,台湾割譲に反対した台湾の軍官民によって建国された共和国。1895年5月25日に樹立され,総統に台湾巡撫唐景崧(とうけいすう),副総統兼全台義軍統領に台湾の挙人邱逢甲(きゆうほうこう)が就任し,年号を永清と定め,国旗も制定された。しかし,北白川宮能久(よしひさ)親王が率いる日本軍の攻撃をうけ,6月4日には唐総統が中国に逃れ,南部抵抗をつづけた劉永福も10月19日に大陸に逃れたことによって崩壊した。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「台湾民主国」の解説

台湾民主国
たいわんみんしゅこく

下関条約締結後,台湾住民の割譲反対で独立宣言した国名
下関条約を受けて1895年5月10日,日本が台湾総督府を編成すると,日本への割譲に反対する台湾住民が,在住の中国人官僚を担いで,5月23日アジア最初の共和政府を建て台湾民主国の独立を宣言。フランスの支援を過大に期待して独立を宣言したが,諸外国の承認を得られぬまま,日本軍の進撃弾圧で同年10月に崩壊。この間,独立宣言発表後から,担ぎ上げられた中国人官僚は次々に台湾を逃げ出し,移住民と台湾先住民が日本軍に激しく抵抗した。最後まで抵抗軍を指導した人物のひとりに,ヴェトナム黒旗軍を率いて反仏闘争を展開した劉永福がいた。

出典 旺文社世界史事典 三訂版旺文社世界史事典 三訂版について 情報

山川 世界史小辞典 改訂新版 「台湾民主国」の解説

台湾民主国(たいわんみんしゅこく)
Taiwan Minzhuguo[中],The Republic of Formosa[英]

台湾割譲を阻止するために樹立された国家。台湾の郷紳(きょうしん)層は,台湾が清国から独立,列強から承認されれば,日本の台湾領有を阻止できると考え,1895年5月総統唐景崧(とうけいすう),大将軍劉永福(りゅうえいふく)とする台湾民主国を樹立した。日本軍が上陸すると,唐は中国大陸へ逃亡したが,劉は台南で抗日戦を指導した。しかし戦局が悪化した10月,劉も中国大陸へ逃亡,台湾民主国は消滅した。

出典 山川出版社「山川 世界史小辞典 改訂新版」山川 世界史小辞典 改訂新版について 情報

山川 日本史小辞典 改訂新版 「台湾民主国」の解説

台湾民主国
たいわんみんしゅこく

1895年(明治28)下関条約調印後,列強の干渉をよびこみ台湾割譲を阻止するためうまれた一時的政権。台湾巡撫唐景崧(とうけいすう)・邱逢甲(きゅうほうこう)らは,5月23日「民主国」樹立を宣言,唐が総統に就任した。しかし三国干渉の結果に満足した列強は動かず,李鴻章(りこうしょう)は6月2日樺山資紀(すけのり)台湾総督との間に台湾授受手続きを終了させ,台湾自立による割譲阻止策は失敗,唐らは大陸に逃走した。その後各地で民軍が激しく抵抗したが,日本軍により同年11月平定された。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「台湾民主国」の意味・わかりやすい解説

台湾民主国
たいわんみんしゅこく
Tai-wan min-zhu-guo; T`ai-wan min-chu-kuo

日清戦争直後,台湾に建国された共和国。光緒 21 (1895) 年5月2日 (太陽暦5月 25日) ,日本の台湾割譲に反対する人々は台湾巡撫唐景 崧 (とうけいすう) を総統とし,永清の年号,藍地に黄虎の国旗を定め,議会を台北に設けて建国した。しかしただちに日本軍の攻撃を受け,同年5月 14日唐景 崧は中国に敗走し,台湾民主国は滅亡した。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の台湾民主国の言及

【日清戦争】より

…以上のように戦争期間が不明確な理由は,日清戦争が次の三つの戦争の複合だったからである。(1)朝鮮に対する宗主権の維持をはかる清国を朝鮮から排除して,朝鮮を保護下におこうとした日清間の武力紛争,(2)その目的を達成したのち日本が戦場を旅順,威海衛,澎湖島という東アジアの戦略要地にひろげたために生起した中国分割をめぐる列強との紛争,(3)朝鮮,中国東北,台湾など日本占領地域における民族的抵抗を抑圧するための朝鮮国や台湾民主国に対する民族抑圧戦争。(1)は国際法上の戦争であり,(2)はロシア,ドイツ,フランス3国の武力干渉を誘発しながら日本が屈服したために未発に終わった帝国主義戦争であり,(3)は事実上の戦争でありながら,事変もしくは内戦とされたものである。…

※「台湾民主国」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

今日のキーワード

ベートーベンの「第九」

「歓喜の歌」の合唱で知られ、聴力をほぼ失ったベートーベンが晩年に完成させた最後の交響曲。第4楽章にある合唱は人生の苦悩と喜び、全人類の兄弟愛をたたえたシラーの詩が基で欧州連合(EU)の歌にも指定され...

ベートーベンの「第九」の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android