数人の者が同一の物を共同で所有する形態の一つ。共同所有の形態としては、合有のほかに、共有と総有とよばれるものがある。このうち、共有は、単独所有にもっとも近い形態で、各人が持分権を有し(民法249条)、いつでも分割請求できる(同法256条1項本文)。これに対して、合有は、各人が持分権を有するものの、共同の目的のために複数の人が結合しているので、団体的な制約を受ける。その結果、共有とは異なり、分割請求および持分権の処分が制限される。ゲルマン社会では、家長が死ぬと子はその遺産を分割せず共同相続し、全員で権利主体となることから、ギールケGierkeという学者が「合有」という概念を提唱した。日本でも、民法上、組合財産(同法668条)は「共有」とされているが、多くの学説は「合有」であると解している。というのも、組合員は、組合財産の持分を処分することができず(同法676条1項)、また、生産前に組合財産の分割を求めることもできないからである(同法676条2項)。このほか、共同相続人の相続財産も合有であるとする学説もあるが、民法は、これを「共有」であると規定し(同法898条)、持分の処分や分割が認められるため、判例と学説も、合有という概念を用いる必要はないと解している。
[野澤正充]
共同所有の一種。共同所有者間に一定の目的があって,この目的達成の手段として財産(1個とはかぎらず,むしろ,2個以上から成ることが普通)を共同で所有する場合をさす。各共同所有者は持分権を有するが,共同目的による団体的制約をうけ,共同目的が終了するまで,持分権の処分が制限され,財産の分割請求ができない。合手的共有,総手的共有ともいう。元来,ドイツ法で形成され発展した観念で,古代ゲルマン社会における家長死亡後の家産に対する共同相続人の共同所有に由来するとされる。ドイツ民法は,組合財産(718条以下),夫婦共通財産(1437条以下),共同相続財産(2032条以下)を合有と規定する。日本でも,近世における検地帳などから,水田が数人の構成する団体の名義において団体員全体の所有になっていた例などが知られている。仲間持といわれるもので,合有とされる。現行法上,合有の語は,受託者が数人ある場合における信託財産についてそれが合有である旨の明文規定がある(信託法24条1項)だけで,これ以外にはない。民法は,組合財産(668条),夫婦共通財産(762条2項),共同相続財産(898条)について〈共有〉という語を用いているが,近時の学説は,組合財産を合有とみる。組合員の組合財産に対する持分処分が制限され,分割請求の自由がないからである(民法676条)。共同相続財産についても合有とする学説があるが,判例は,合有でなく共有であるとする。
→共同所有
執筆者:玉田 弘毅
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…数人または多数人が共同で同一物を所有することで,共有,合有,総有の三つがある。共有は,一般に,偶発的・暫定的な共同所有であることから,団体的制約が最も少なく,各人は所有権を数量的に分有し,自由にその持分権の処分ができ,原則としていつでも目的物の分割請求ができる。…
…この場合,A,B,Cは,原則として,出資に応じて,山林に対し持分を有し,いつでも持分に応じて分割することを他の者に請求することができる。第2は合有である。合有の特色は各人は持分を有するが分割請求権を有しない点にある。…
※「合有」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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