共同所有の一種で,多数の者によって構成される共同体(ゲノッセンシャフトなどとよばれる)の土地その他の財産を,共同体とその構成員が連帯して支配する形態をいう。すなわち,財産の管理・処分の権能は,共同体に属し,使用・収益の権能は,構成員に帰属している。構成員の団体的結合関係が強く,構成員は,構成員としての資格を備えることによって,この権能を取得し,資格をなくすことによって,権能を喪失する。共同体としての管理・処分の方法,構成員としての使用・収益の態様,構成員の資格の得喪などは,いずれも共同体の内部規範によって決められる。構成員は,財産に対する持分を有していないし,したがって,分割を請求することもできない。ゲルマンの村落共同体の土地に対する支配が総有の典型とされている。
日本では,入会権(入会)が総有の性質を有する,といわれている。入会集団の構成員が山林原野に立ち入り,区域などを決めないで,自由に利用しているような場合は,それにあたるであろうが,入会権の内容は,経済の発展にともなって,直轄利用や分割利用に変化しており,そのなかで,持分が生じ,その移動もなされているので,いちがいに総有の性質を有するといいきれないであろう。また,〈権利能力なき社団〉の財産は,総有であるとする見解が多いが,疑問である。それぞれの社団について,その性質を考察すべきであり,しかも,社団の単独所有と解して妨げない場合が多い。現在においては,総有という表現は,なるべくさけたほうがよい,と思われる。
執筆者:小林 三衛
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多数の者が同一の物を共同で所有する場合の一つの形態。総有では、その物の管理・処分などの権限は、多数の者で形成する団体自体に属し、各団体員はその物を使用・収益する権限を有するにとどまる。共同所有の形態のなかでもっとも団体主義的色彩が強いもので、民法で定められている共有と比べると、各構成員は持分(もちぶん)を有せず、また分割請求権もない。その典型はゲルマンの村落の共同体のなかにあるといわれる。日本でも江戸時代における村落団体の共同所有は総有であったといわれ、現在も残存する入会(いりあい)はその後身としてやはり同じ性格をもつ。また、いわゆる権利能力なき社団の財産関係も総有であるとされている。この場合に、団体員は、この団体のメンバーたる資格を取得することによって使用・収益の権利を取得し、メンバーたる資格を失うことによって当然にその権利も失う。そして、団体員となるための資格、団体としての管理・処分の要件、団体員各人の使用・収益の方法などは、団体の規約または慣行によって決められている。
[高橋康之・野澤正充]
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…数人または多数人が共同で同一物を所有することで,共有,合有,総有の三つがある。共有は,一般に,偶発的・暫定的な共同所有であることから,団体的制約が最も少なく,各人は所有権を数量的に分有し,自由にその持分権の処分ができ,原則としていつでも目的物の分割請求ができる。…
…しかし,分割請求はできないのである。第3は総有である。総有は持分も分割請求権もない点に特色がある。…
※「総有」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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