吉士(読み)キシ

デジタル大辞泉 「吉士」の意味・読み・例文・類語

き‐し【吉士/吉師】

古代かばねの一。朝鮮半島より渡来した官吏に与えられた。
新羅しらぎの官職名。一七階官位中の一四位。

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精選版 日本国語大辞典 「吉士」の意味・読み・例文・類語

キシ【吉士・吉師】

  1. 〘 名詞 〙 ( 古代朝鮮語に漢字を当てたもの )
  2. 新羅(しらぎ)の官職名。一七等中の第一四番目。〔北史‐新羅伝〕
  3. 昔、日本に渡来した人々の名につける敬称文筆の事や通訳など外国との事務を職とした者の称号
    1. [初出の実例]「百済の国主照古王、牡馬壱疋、牝馬壱疋を阿知吉師(キシ)に付けて貢上(たてまつ)りき」(出典古事記(712)中)

きっ‐し【吉士】

  1. 〘 名詞 〙 りっぱな男子
    1. [初出の実例]「吉士(キッシ)を懐ふの情がないことはない」(出典:魚玄機(1915)〈森鴎外〉)
    2. [その他の文献]〔書経‐立政〕

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「吉士」の意味・わかりやすい解説

吉士
きし

古代の氏(うじ)名、姓(かばね)の一つ。吉師、吉志、企師とも書く。古代朝鮮語では「王」の意で(『周書(しゅうじょ)』百済伝)、新羅の官位17等の第14位など朝鮮諸国の称号にも見える。渡来系氏族で、6世紀から7世紀には難波(なにわ)、草壁(くさかべ)、日鷹(ひたか)などを冠する吉士集団が難波周辺を本拠とし、主に対朝鮮諸国外交に活躍した。7世紀後半には他の氏の者も登用され、この面での吉士の役割は終わったが、8世紀以降も摂津国東生(ひがしなり)・西成(にしなり)両郡の郡領氏族として存続し、難波館(なにわのむろつみ)での外交儀礼を掌った。また阿倍氏に引率され、大嘗祭(だいじょうさい)には吉志舞を奏上した。

[森 公章]

『三浦圭一著「吉士について」(『中世民衆生活史の研究』所収・1981・思文閣出版)』『森公章著「古代難波における外交儀礼とその変遷」(『古代日本の対外認識と通交』所収・1998・吉川弘文館)』

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改訂新版 世界大百科事典 「吉士」の意味・わかりやすい解説

吉士 (きし)

日本古代の(かばね)の一つ。吉志,吉師とも表記され,古代朝鮮において首長を意味する称号が渡来人の称号として日本で用いられ,やがてそれが姓となり,また氏名ともなった。吉士を姓とする氏族には,日鷹吉士,難波吉士,調(つき)吉士,三宅吉士などがおり,吉士を氏名とする者とならんで,ある者は百済に遣わされ,ある者は新羅・唐へ派遣されるというように,対外交渉の任務に就いた者を多く出している。ちなみに朝鮮の新羅では,官位十七等の第14位に吉士があり,稽知,吉之,吉次とも書きあらわされていた。
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普及版 字通 「吉士」の読み・字形・画数・意味

【吉士】きつし

神につかえる者。〔詩、大雅、巻阿〕(あいあい)たる王の多吉士 維(こ)れ君子の 天子に媚(よ)しとせらる

字通「吉」の項目を見る

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