吉岡温泉(読み)よしおかおんせん

日本歴史地名大系 「吉岡温泉」の解説

吉岡温泉
よしおかおんせん

[現在地名]鳥取市吉岡温泉町

湖山こやま池南西方、湖山川東岸にある。硫酸塩系の単純泉で、胃腸病・皮膚病・神経痛・リウマチなどに効能がある。泉源は現在三ヵ所に統合されている。泉源発見の時期は応和二年(九六二)ともいわれる。伝承によれば、当地に住む長者の娘がひどい皮膚病にかかり、菖蒲しようぶ座光ざこう寺に参籠して病平癒を祈願した。満願の日に本尊薬師如来が夢に現れ、そのお告げに従って当地のウツロ田の古柳の根元を掘ると霊泉が湧き出た。この泉の湯で娘の身体を洗ったところ病が完治したという。古柳の株から湧出したので温泉の名をかぶ湯とも称したといわれ、また長者は古柳の木で薬師如来を刻み宝泉ほうせん寺の本尊としたとも伝える(延宝二年「吉岡温泉記」宝泉寺蔵など)。「因幡志」には湧出の時代は不明だが、のちのあら湯の傍らに柳の老樹があり、その株の朽ちた穴から湯脈を発しており、その泉源を株湯というと記される。

天正三年(一五七五)六月一八日当地を通った島津家久は、「さて吉岡乃城、同其町を通るに、出湯有、各々入」と記している(家久君上京日記)。近世には(吉岡村)の中ほどを流れる小川の両側に民家が軒を並べ、たくさんの湯治客で繁盛する温泉場であった。西の山手にあったいちの湯とその東に並ぶの湯は藩主の専用浴場でかぎ湯と称し、藩主ら以外入浴できない禁湯とされた。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「吉岡温泉」の意味・わかりやすい解説

吉岡温泉
よしおかおんせん

鳥取県東部、鳥取市湖山池(こやまいけ)南方にある山間の国民保養温泉で、吉岡活断層線に沿う。平安時代に葦岡(あしおか)長者が愛娘(まなむすめ)の皮膚病の治癒を薬師如来(やくしにょらい)に祈り、そのお告げで温泉を発見したと伝えられる。泉源4、泉深39~175メートル。泉質は単純温泉。水温の高い湯尻(ゆじり)などの小川では大形のゲンジボタルが発生する。鳥取カントリー倶楽部吉岡温泉コースがある。山陰本線鳥取駅からバスの便がある。

[岩永 實]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「吉岡温泉」の意味・わかりやすい解説

吉岡温泉
よしおかおんせん

鳥取市西部,湖山池の南西岸近くにある温泉。古くから知られた湯治場で,上ノ湯と下ノ湯に分れる。単純泉で泉温は 43~55℃。胃腸病,皮膚病,痔疾などにきく。付近には箕上山城跡公園や防己尾 (つづらお) 城跡,秋葉公園などがある。ゲンジボタルが有名。国民保養温泉地に指定されている。

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デジタル大辞泉プラス 「吉岡温泉」の解説

吉岡温泉

鳥取県鳥取市、湖山池南方にある温泉。江戸時代は鳥取藩主池田家の湯治場。1966年、「鹿野・吉岡温泉」として国民保養温泉地に指定。

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