同調・非同調(読み)どうちょうひどうちょう(その他表記)conformity

翻訳|conformity

日本大百科全書(ニッポニカ) 「同調・非同調」の意味・わかりやすい解説

同調・非同調
どうちょうひどうちょう
conformity
non-conformity

社会に通用している規範行動様式にそのまま従い、大多数の人々がとる態度や意見に順応していくことを同調といい、その対概念非同調という。社会が一つのまとまった全体として存在していくためには、社会は成員に準拠すべき一定の行動様式を示し、これに即した行動をとらせなければならない。それでなければ、成員はそれぞれかってな行動をとり、混乱が生じ、社会は解体する。他方、成員個人の側でも、自分の行動の指針となるような社会的に是認された基準がなければ、判断に迷い、安心して生活できない。したがって、社会はその成員の行動に一定の方向と形態とを与え、同調を獲得することによって存続でき、個人は与えられた方向に従い、大勢に順応することによって自分の生活を安定できる。この意味で、同調は、社会生活の通常の生理であり、基本的メカニズムだといえる。

 幼児遊戯集団や自発的に形成される小集団を研究した社会学者や社会心理学者は、このような未定型の集団内でも自然に一定のルールができあがり、これに同調せぬ成員は排斥され、集団に受け入れられたい欲求を強くもつ成員ほどよく同調する傾向があることを明らかにした。集団内の認知行動について詳細な実験を行ったシェリフMuzafer Sherif(1906―88)たちは、成員は自分で確認した事実を固執するよりも、大多数の成員が事実だとする誤った意見に追従することを報告している。オールポートFloyd Henry Allport(1890―1948)は、集団基準から逸脱した行動をとる人々の数が、逸脱の度合いの増大につれて減少し、グラフで示すとJ型のカーブを描くという同調行動の「J曲線仮説」を提示した。

 同調は社会と個人の安全弁ではあるが、他面で社会の柔軟性と個人の主体性とを喪失させる危険性も含んでいる。とくに既存の規範をあまりにもかたくなに遵守し、過度の同調をすること(過同調overconformity)は、その硬直性のために、変化する状況に対応できず、本来は秩序形成にプラスに働くはずの同調の機能が逆に作用し、新しい状況に応じた秩序の形成を妨げ攪乱(かくらん)させる。マートンが過同調の概念を用いて官僚制の逆機能を分析したことはよく知られる。

[森 博]

非同調

非同調は、既存の規範や行動様式に同調せず、それから外れるという点では逸脱の一種であるが、単なる逸脱と異なり、社会の規範や行動様式を不当・不正なものとみなし、あえてこれに異議を申し立て、新しい規範の樹立を目ざし、別の道を自覚的に進んでいくことを特徴とする。イングランド教会に対抗した非国教徒Nonconformistsがその好例である。この非同調は、反社会的というレッテルを貼(は)られるのが常であるが、硬直と画一に陥りがちな社会に活を入れ、社会の革新と進歩とに寄与する要素を含んでいるのであって、非同調を欠く社会は、かえって病的である。

[森 博]

『L・フェスティンガー著、末永俊郎監訳『認知的不協和の理論』(1965・誠信書房)』『A・K・コーヘン著、細井洋子訳『逸脱と統制』(1968・至誠堂)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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