精選版 日本国語大辞典 「名乗・名告」の意味・読み・例文・類語
な‐のり【名乗・名告】
〘名〙
① 自分の名前や身分などを人に告げること。
※宇津保(970‐999頃)俊蔭「かかるすまひし給ふは誰ぞ、なのりし給へなどの給へど、いらへもせず」
※神楽歌(9C後)明星・朝倉「〈本〉朝倉や 木の丸殿に 我が居れば 〈末〉我が居れば 奈乃利(ナノリ)をしつつ 行くは誰」
※十訓抄(1252)一「さてかの木丸殿には用心をしたまひければ、入来る人かならず名のりをしけり」
④ 単に、名前。
※蔭凉軒日録‐長享二年(1488)九月二三日「御誕生御祈祷自二今日一初御名乗。義熙。於二疏中一読レ之」
⑤ 能や狂言などで、登場した役がまず自分の名や身分、事の成り行き、今後の展開を自己紹介的に述べること。
※わらんべ草(1660)一「ぶたいへ出る時、なのり、ことばを心にもち、言出しをわするべからず」
⑦ 行商人などが、売り物の名を呼びながら歩くこと。
な‐の・る【名乗・名告】
〘自ラ五(四)〙 (後世、「名をなのる」などのように、他動詞的にも用いる)
② 自分がその当人であることを申し出る。自分にかかわっている事や物であることを告げる。告白する。白状する。名のりでる。
③ 名前としてつける。称する。また、そういう名である。
※平家(13C前)六「子息一人養子にして、清国となのらせ」
④ 能や狂言などで、登場した役がまず自分の名や身分、事の成り行き、今後の展開を自己紹介的に述べる。
⑤ 虫・鳥などが存在を知らせて鳴く。虫・鳥などが鳴声をたてる。
※枕(10C終)二八「ねぶたしとおもひてふしたるに、蚊のほそごゑにわびしげに名のりて、顔のほどとびありく」
⑥ 行商人などが、品物を売る際に、その品物の名を叫ぶ。売り声をあげる。
※俳諧・鶉衣(1727‐79)続「はかばか敷商人は来らね共、海老・鰯・小貝やうの物、名のりて過る事も明くれなり」
⑦ 相撲で、行司が勝った力士の方へ軍配を上げて名を呼びあげる。
※咄本・軽口御前男(1703)一「行司団(うちわ)をあげ、〈略〉と名乗(ナノリ)ければ」
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