江戸初期の浄土宗の僧。源蓮社然誉大阿と号する。岩槻城主太田賢正の家臣井上信貞の次男として武蔵国埼玉郡新方領一の割村(埼玉県春日部市)に生まれた。幼名を竜寿丸といい,1569年(永禄12)隣村の浄土宗林西寺8世岌弁(きゆうべん)について出家し,名を曇竜と称した。2年後増上寺学寮に入り存応(ぞんのう)に師事した。1584年(天正12)林西寺,1600年(慶長5)武州滝山(東京都八王子市)の大善寺住職を経て,13年徳川家康が,新田義重追善のために上野国太田の地(群馬県太田市)に創建した大光院に,師存応の推挙によって開山として入寺し,悪竜をのむ夢をみて名を呑竜と改めた。貧困のため行われていた堕胎や間引きの惨状に対して,寺の禄米を施して小さな生命を救った。禄米流用の非難が起こるや困窮者の子弟を形だけ剃髪させて,弟子の名目のもとに慈善行を続け,子育て呑竜と呼ばれた。1616年(元和2)にはツル殺しの孝子源次兵衛をかばって信州小諸の仏光寺に6年間閑居したが,許されて帰寺するなど,民衆と苦難をともにして教化に尽くした。
執筆者:藤井 正雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
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