周波数標準(読み)しゅうはすうひょうじゅん(その他表記)frequency standard

日本大百科全書(ニッポニカ) 「周波数標準」の意味・わかりやすい解説

周波数標準
しゅうはすうひょうじゅん
frequency standard

周波数測定の基準となる正確な周波数。周波数は、周期的現象が1秒間に繰り返される回数であり、単位ヘルツHz)を使う。したがって、周波数の標準時間の標準とすることもできる。すなわち周波数の基準は、セシウム原子の固有共鳴振動の周波数を、91億9263万1770ヘルツとすることにより規定され、一方、時間の基準は、その固有共鳴振動の91億9263万1770回の繰り返しに要する時間を1秒とすることで定義される。このような原子振動に基づく時間の標準は原子時といわれ、それまでの地球自転公転に基づくものよりも、はるかに精密な標準として、1967年以来世界的に用いられている。

 周波数標準には一次標準と二次標準とがある。前者は、他の標準で校正をしなくても、それ自身で周波数の基準値が実現できるもので、実験室型のセシウム原子周波数標準器原子時計)はその代表例である。現在、この型の標準器の正確さは10兆分の1(30万年に1秒の誤差)に達している。後者は、一次標準や標準電波による周波数の校正が必要な標準器で、わずかながら周波数が経年変化をするような可搬型のセシウム原子標準器、ルビジウム原子標準器、水晶発振器などがこれに属する。

 科学技術産業通信交通など社会活動のあらゆる分野で不可欠な周波数と時間の標準を一般の利用に供するため、情報通信研究機構NICT)では、同所の一次標準器に基づいて長波(呼出符号JJY)の標準電波を発射している。

[若井 登]

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改訂新版 世界大百科事典 「周波数標準」の意味・わかりやすい解説

周波数標準 (しゅうはすうひょうじゅん)
frequency standard

周波数の単位ヘルツ(Hz)は時間間隔の単位秒の逆数であるから,周波数の標準は時間標準と同一である。地球の回転を基とし,水晶時計で維持されてきた時間,周波数の標準は,1967年よりセシウム原子周波数標準に置き換えられた。133Csの原子の基底状態の二つの超微細準位の間の遷移の周波数を9 192 631 770Hzとするもので,その精度は10⁻13に達する。これを基とし,周波数,時間間隔,時刻の標準を与えるものとして,郵政省電波研究所より,短波(2.5~15MHz)と長波(40kHz)の標準電波が発射されている。これを受信することにより標準が得られる。発射精度は10⁻11であるが,電離層による反射のため受信の精度は10⁻8~10⁻10となる。標準電波のほか,商用のセシウム,ルビジウム周波数標準器,水晶発振器,周波数シンセサイザー標準信号発生器などが標準として用いられる。またテレビ電波のサブキャリアも比較的高い精度の周波数標準として用いられる。
JJY
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「周波数標準」の意味・わかりやすい解説

周波数標準
しゅうはすうひょうじゅん
frequency standard

周波数基準ともいう。周波数および時間の標準となるもの。周波数標準と時間標準とは一方が決れば他方も決る。長さや質量と同様,重要な基準である。以前は地球の公転運動などの周期を用いたが,天体運動のゆらぎのため 10-8 程度の正確さしか得られなかった。現在ではセシウム原子のマイクロ波スペクトルを基準とする原子周波数標準器によって,10-14 程度の精度にまでなった。その周波数は 91億 9263万 1770Hz と定められている。これを基準としてさらに,量子エレクトロニクスを用いたほかの周波数標準がある。ルビシウム原子発振器も小型化,低価格化により広く利用されている。また周波数標準は標準電波の補正にも用いられている。

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