量子エレクトロニクス(読み)りょうしえれくとろにくす(英語表記)quantum electronics

日本大百科全書(ニッポニカ) 「量子エレクトロニクス」の意味・わかりやすい解説

量子エレクトロニクス
りょうしえれくとろにくす
quantum electronics

おもに量子力学基礎理論とし、物質電磁波相互作用を取り扱う電子工学の一分野をいう。

 量子力学によると、物質中に束縛された電子は、とびとびのエネルギー状態にある。したがって、物質は固有なエネルギー準位をもっている。一方、電磁波の光領域では、粒子性が顕著になる。つまり、電磁波はエネルギーhνの光子の集まりと考えられる。ただし、hプランク定数、νはそのときの電磁波の周波数である。一般に物質と電磁波の相互作用は、物質のエネルギー準位と光子の間で行われる。

 ある条件のもとに、物質に吸収されたエネルギーは、それを取り巻く電磁波と同じ波長位相をもつ電磁波として放出される。これが誘導放出であり、それを増幅したものがレーザー光である。レーザー光の特徴は、時間的にも空間的にも位相が一様な光が得られる点にある。そのことをコヒーレンス(可干渉性)がよいという。量子エレクトロニクスは、このようなレーザーの基礎理論と各種レーザー装置が、その中心的位置を占めている。

 そのほか、レーザー光のもつコヒーレンスのよさと高いエネルギー密度の利用によって発達してきた非線形光学や、電気光学効果、音響光学効果などを利用した光制御技術も量子エレクトロニクスなかの重要な分野である。なお、関連分野として「光エレクトロニクス」や「量子光学」がある。

[長澤親生]

『前田三男著『量子エレクトロニクス』(1987・昭晃堂)』『藤岡知夫・小原実・斉藤英明著『光・量子エレクトロニクス』(1991・コロナ社)』『大津元一著『量子エレクトロニクスの基礎』(1999・裳華房)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「量子エレクトロニクス」の意味・わかりやすい解説

量子エレクトロニクス
りょうしエレクトロニクス
quantum electronics

エレクトロニクスが電子を利用する技術であるのに対し,分子や原子の働き,およびその量子力学的定常状態の間の遷移応用した技術である。分子,原子および原子核と電磁波の相互作用における非直線現象や飽和効果を通信,制御,測定などに応用する科学および工学の分野。メーザー,レーザーとその応用,非線形光学などが中心課題であって,その周波数範囲はミリ波から紫外線にまで及ぶ。また,長さの1次標準にクリプトン原子の光の波長が使用されるなど,量子エレクトロニクスは高精度の測定標準にも利用されている。

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