メランジュ(読み)めらんじゅ(英語表記)mélange フランス語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「メランジュ」の意味・わかりやすい解説

メランジュ(地学)
めらんじゅ
mélange フランス語

2万5000分の1程度の縮尺地質図に表せるほどの広がりをもつ地質体で、泥岩などの細粒の基質中に、数センチメートル~数キロメートルに達するさまざまな大きさ・種類の異地性・準原地性の岩塊(ブロック)が含まれているもの。メランジュとは、混合という意味のフランス語である(英語のmixtureに相当)。メランジ、メランジェともよばれる。岩塊が基質中に含まれているブロック・イン・マトリックスblock in matrix構造をもつ。一般的には分布幅が数十メートル以上のものがメランジュとよばれ、これより分布幅の狭いものはブロック・イン・マトリックスの構造をもっていてもメランジュとよんではいけない。メランジュとよべない小規模なものや、単に岩石名として記載する場合は、混在岩や乱雑層という用語が使用される。基質の泥岩は剪断(せんだん)されていることが多い。岩塊は堆積(たいせき)岩起源のものだけではなく、変成岩や、火成岩起源のものもある。アメリカ合衆国カリフォルニアのフランシスカン層群はメランジュの代表的なものとされている。

 元来はイギリス、北部ウェールズの先カンブリア界に用いられ(グゥナメランジュ)、造構性の変形により地層が岩塊化したと考えられたが、現在ではメランジュという言葉は、成因を問わない用語として使われている。成因がわかった場合、造構性の変形によるものはテクトニックメランジュ(造構性メランジュ)、堆積時の変形である海底地すべりによるものはオリストストローム(堆積性メランジュ)、泥ダイアピール(泥注入)によるものはダイアピリックメランジュ(注入性メランジュ)とそれぞれよばれる。しかし、メランジュの形成がどの成因によるものかを特定することはむずかしい。西南日本内帯の美濃(みの)‐丹波(たんば)帯、西南日本外帯の秩父(ちちぶ)帯、四万十(しまんと)帯中のメランジュは、1970~1980年代にはオリストストロームと考えられることが多かったが、その後、テクトニックメランジュ、ダイアピリックメランジュと考えられるものも報告されており、複合的な成因をもつメランジュも多いと考えられる。

[村田明広]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「メランジュ」の意味・わかりやすい解説

メランジュ
melange

起源や時代の異なる種々の岩石が入り交った混在堆積物という意味。カリフォルニアのフランシスカン層群で最初に使われて以来有名になった。通常,黒色頁岩のなかに枕状溶岩チャート,泥岩などが切れ切れになって混在しており,プレートの沈み込みに伴って,陸源の砂岩や泥岩の互層の間に,海洋底堆積物や海洋底および海山の玄武岩溶岩,チャートや礁性石灰岩などが破砕され,ブロック状に混入,堆積して形成されると考えられている。このメランジュの存在は地質時代にプレートが沈み込んでいたことを示唆するものと考えられている。

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