日本大百科全書(ニッポニカ) 「四大家族」の意味・わかりやすい解説
四大家族
しだいかぞく
1930~40年代に中国を支配した四大財閥・政治集団で、蒋介石(しょうかいせき/チヤンチエシー)一族、宋子文(そうしぶん/ソンツーウェン)一族、孔祥煕(こうしょうき/コンシヤンシー)一族、陳果夫(ちんかふ/チェンクオフー)・陳立夫(ちんりっぷ/チェンリーフー)一族をさす。このうち陳一族は直接の血縁関係はなく、CC団などの形で参加した。4家とも地主、官僚、高利貸という支配層の上にたち、国家・党組織を利用しつつ国家独占資本主義の集団であった。
蒋介石は浙江(せっこう/チョーチヤン)省の塩商の出身、若くして上海(シャンハイ)で浙江財閥の庇護(ひご)のもとに取引所の仲買人をしたことがある。陸軍を掌握すると同時に主要な銀行を手中に収め、四大家族のうちでも圧倒的な力を誇った。宋子文は新式銀行を中心として実力を蓄え、保険や各種の流通・重工業生産を押さえ、自分の資産はおもにアメリカに温存した。孔祥煕は山西(さんせい/シャンシー)省の地方財閥から銀行・流通を握ることで成長した。陳兄弟は流通業から身をおこし、政治結社CC団をつくって銀行などを押さえた。4家の確執は強く、政府の財政部や主要銀行の支配権も宋家から孔家へ移り、日中戦争末期には宋家が奪回、戦後は陳家に移っている。新中国の成立により実権をすべて失い、資産の一部を台湾・アメリカに移して解体した。
[加藤祐三]
『陳伯達著、大金久展訳『中国四大家族』(1955・青木書店)』▽『許滌新著、山下龍三訳『官僚資本論』(1953・青木書店)』