団結体(労働組合)を通じて組合活動を行う労働者の基本的人権の一つ。日本国憲法第28条では労働者に対し「団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利」を保障している。ここでいう「団体行動をする権利」は、普通、団体行動の典型が争議行為であるところから、もっぱら争議権の意味で理解される。しかし、これとは別個の権利として団体行動権という場合には、日常的な労働組合の活動の権利をいう。ところで、労働組合は労働者の労働条件の維持改善その他の目的を実現するために、職場集会、構内デモ、要求を記したリボンの着用、ビラ貼(は)りその他の多様な活動を展開する。しかし、これらの活動は、普通、企業の施設を利用したり就業時間中に行われるので、使用者が施設管理権に基づいて施設の利用を禁止したり、リボンをつけて就業している労働者にその取り外しを命令した場合、労働者の団体行動権との衝突という問題が生ずる。
学説や判例のなかには、前記のような行動を使用者の許可なしに行う自由はないとするものがある。しかし、団体行動権を含む労働基本権は歴史的には使用者の諸権利と対抗しつつそれを制約するものとして承認されてきたし、また、日本の労働組合は企業別に組織されているため、企業内で組合活動を展開せざるをえない。したがって、団体行動権の保障の意味が実現されるためにはこのような活動の自由が保障されなければならないところから、就業時間中の組合活動や企業施設の利用につき、使用者に一定の受忍(じゅにん)義務(利益の制約をがまんする義務)があるとする有力な学説がある。しかし判例は、使用者の承認なしにこれらの活動をする自由はないとしている(1979年10月30日最高裁判決、1982年4月13日最高裁判決)。
[吉田美喜夫]
『日本労働法学会編『講座21世紀の労働法 第8巻――利益代表システムと団結権』(2000・有斐閣)』
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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