国士無双(読み)こくしむそう

精選版 日本国語大辞典 「国士無双」の意味・読み・例文・類語

こくし‐むそう ‥ムサウ【国士無双】

〘名〙
① 国士の中で並ぶ者のない人物。天下第一のすぐれた人物。
史記抄(1477)一二「国士と云は国士無双なんどと云て一国の中に双びかいものを云ぞ」 〔史記‐淮陰侯伝〕
マージャンの役の一つ「シーサンヤオチュウ(十三么九)」の俗称。

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デジタル大辞泉 「国士無双」の意味・読み・例文・類語

こくし‐むそう〔‐ムサウ〕【国士無双】

国士の中で並ぶ者もない人物。天下第一の人物。
マージャンの役満貫の一。一と九の数牌シューパイ字牌ツーパイを各1個ずつ計13牌をそろえ、そのうち一種類だけが2個になるようにそろえたもの。十三么九シーサンヤオチュー
[補説]作品名別項。→国士無双

こくしむそう【国士無双】[映画]

伊丹万作監督による映画の題名。昭和7年(1932)公開。サイレント時代劇コメディー。出演、片岡千恵蔵山田五十鈴ほか。
保坂延彦監督によるリメーク映画。昭和61年(1986)公開。出演、中井貴一、原田美枝子、原日出子ほか。

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改訂新版 世界大百科事典 「国士無双」の意味・わかりやすい解説

国士無双 (こくしむそう)

伊丹万作監督のサイレント映画の〈幻の名作〉で,フィルムは現存しない。1932年製作の片岡千恵蔵プロダクション(千恵プロ)作品。原作は伊勢野重任(その後,千恵プロの専属となって山中貞雄稲垣浩の作品の脚本を書いた)の《にせ者》。〈武士道華やか過ぎしころ〉という字幕で始まり,〈武芸十八般本家本元総元締,将軍家御指南番〉の上泉伊勢守(高勢実乗)がその名前をかたるにせ者(片岡千恵蔵)に敗れ,〈ほんものがにせものに負けたためしは,古今東西,歴史にない〉と修業を積んで挑戦したがふたたび敗れ,〈正しいものが正しくないものに負けた〉〈正しいものが勝つのではない。いつの世でも勝つものが正しい〉という痛烈な逆説の論理を展開する喜劇であり,〈武士道〉によって代表される封建的モラルに対する風刺でもある。そして〈勝ったものがにせものでいる必要はない。ほんものになってくれ〉〈拙者にはにせもほんものもない。勝つも負けるも自分があるだけだ〉という押問答の末,勝ったにせものの伊勢守は負けたほんものの伊勢守の娘(山田五十鈴)と手をたずさえて雪の中に消えていき,やがて2個の雪ダルマになってしまうという結末。〈時代劇から剣を奪え〉と主張して時代劇と現代劇の区別をのりこえようとした当時の若い映画作家たち(山中貞雄,稲垣浩,伊丹万作ら)による〈髷(まげ)をつけた現代劇〉という新しい時代劇の代表作1本である。公開当時,とくに〈会話字幕〉の多いことが欠点の一つとして指摘されたが,1935年になってトーキー第1作《忠次売出す》をつくることになる伊丹万作がすでにトーキー移行を意識していたかと思われる作品である。
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四字熟語を知る辞典 「国士無双」の解説

国士無双

国内で並ぶ者のないほどすぐれた人物。

[解説] 「国士」は国内で最もすぐれた人物。「無双」は二つとない、並ぶものがないという意味。漢の宰相しょうが、かんしんを評して言ったことば

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「国士無双」の解説

こくしむそう【国士無双】

北海道の日本酒。酒名は、司馬遷の「史記」からとり、天下一の辛口の酒を目指して命名。大吟醸酒、吟醸酒、純米酒、本醸造酒をそろえる。平成2、8、10、14、19~21年度全国新酒鑑評会で金賞受賞。原料米は美山錦、きらら397、山田錦など。仕込み水は石狩川水系の伏流水。蔵元の「髙砂酒造」は明治32年(1899)創業。所在地は旭川市宮下通。

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デジタル大辞泉プラス 「国士無双」の解説

国士無双〔映画〕

1986年公開の日本映画。監督:保坂延彦、原案:伊勢野重任、伊丹万作、脚本:菊島隆三、撮影:村井博。出演:中井貴一、原田美枝子、原日出子、岡本信人、火野正平、中村嘉葎雄、フランキー堺ほか。第10回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞(原田美枝子)受賞。

国士無双〔日本酒〕

北海道、高砂酒造株式会社の製造する日本酒。全国新酒鑑評会で金賞の受賞歴がある。

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とっさの日本語便利帳 「国士無双」の解説

国士無双

国に二人といないほどの才知の傑出した人物。麻雀の「国無」は二つとない困難な上がり手。

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世界大百科事典(旧版)内の国士無双の言及

【伊丹万作】より

…10年間に22本の映画を撮ったが,すべて自作のシナリオによる。〈日本のルネ・クレール〉などと呼ばれたその〈知性の映像〉,内面のペシミズムとうらはらの軽妙洒脱(しやだつ)な語り口は,彼の映画のプリントとして現存している3本のうちの1本(しかも前半のほぼ1巻分が欠けているといわれる)《赤西蠣太》(1936)と《伊丹万作全集》第3巻所収の〈映画シナリオ集〉にわずかに片鱗がうかがえるのみで,名作といわれる《国士無双》(1932)もトーキー第1作の《忠次売出す》(1935)も現存していない(《赤西蠣太》のほかに現存するのは,戦国時代の経済破壊工作を描く奇抜なアイディアの《気まぐれ冠者》(1935)と,ビクトル・ユゴーの《レ・ミゼラブル》(1862)を翻案した《巨人伝》(1938))。 本名,池内義豊。…

【時代劇映画】より


[小市民映画と鳴滝組]
 世界大恐慌による不景気,戦争への歩みといった暗い世相の中,映画はサイレントからトーキーへと移り変わり,一方に検閲の強化もあって,時代劇は大きく変貌していく。その渦の一つの中心となったのは片岡千恵蔵プロダクションで,伊丹万作監督が《逃げ行く小伝次》《花火》などを経て,ほんものの剣聖がにせものに敗れるという話の《国士無双》(1932)で諧謔(かいぎやく)と風刺の精神を明朗かつ知的に打ち出し,《闇討渡世》(1932)では同じ姿勢で平手造酒の孤独を描いて,伊達騒動を背景にした《赤西蠣太》(1936)でその知的散文精神に基づく映画づくりを完成させる一方,稲垣浩監督《瞼の母》《一本刀土俵入り》(ともに1931),《弥太郎笠》(1932)などが,哀愁と明朗さに満ちた股旅もの映画のスタイルをつくり出した。いずれも片岡千恵蔵主演作品である。…

※「国士無双」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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