すべての国民がなんらかの医療保険に加入し、けがや病気の際に医療給付が受けられる状態にあること。日本では1958年(昭和33)に国民健康保険法(昭和33年法律第192号)が制定され、1961年に国民健康保険事業が始まった。これにより、原則として全国民が平等に保健医療を受けられるようになった。1955年ころまでは、農業や自営業者などを中心に、およそ3割の国民が無保険者であった。
日本の医療保険は、75歳未満を対象とした、民間企業の従業員が加入している健康保険、公務員などの共済組合、農業や自営業者、無職者などの国民健康保険の三つに分けられる。これに加え、75歳以上を対象にした後期高齢者医療制度があり、国民皆保険体制となっている。しかし、近年は非正規の雇用者が増加し、医療保険への未加入者や保険料の未納者が増大している一方、加入者の高齢化で医療保険事業の運営は赤字が続いており、抜本的な改革が必要とされる。
2012年(平成24)12月に発足した第二次安倍晋三(あべしんぞう)内閣は、数種に分かれている保険料体系の一元化によって事業の効率化を進めながら、予防医療の浸透を促し、医療費全体の削減を目ざした取り組みを進めている。その一方、日本方式の医療・保険制度を輸出するため、官民共同で取り組む方針を固めている。今後は厚生労働省に設置した健康・医療戦略推進本部の医療国際展開タスクフォースを中心に具体的な施策の検討が進められる。
[編集部]
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(梶本章 朝日新聞記者 / 2007年)
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…1922年の健康保険法と38年の国民健康保険法がそれである。第2次大戦後は制度の改革が進み,生活困窮者に対する医療扶助とその他の人々に対する医療保険の二つを柱とする医療保障制度が確立し,さらに61年には全国民をなんらかの医療保険に加入させる国民皆保険の体制が実現した。人口高齢化の進行とともに老人保健医療対策が課題となり,医療保険制度間の老人医療費負担のアンバランスの是正や保険と保健を総合した制度の確立をめざして,老人保健法(1982公布)が成立し実施された。…
…1970年代後半から主要各国の医療保険制度に起こっている大きな転換はこれらのことのあらわれである。 日本では,政府が1961年から,すべての国民がいずれかの医療保険制度に本人または家族として必ず加入する国民皆保険を実現した。すべての国民が保険医療をうけられることでの医療保障の確立をはかったものであるが,それはまだ形式的にすぎず,各制度間の格差や財政力の強弱は残った。…
…しかし,医療保険と年金保険の再建と拡大は,戦後の一般的窮乏,医薬品の不足,インフレなどの悪条件に妨げられて遅れた。ようやく55年ころになって,医療保険と年金保険の全国民への適用拡大を目標とする計画が立てられ,61年4月国民健康保険の全市町村での実施,拠出制国民年金の拠出開始をもって,国民皆保険および国民皆年金は実現した。もっとも,この段階ではまだ適用面での普遍化にとどまっており,老齢年金受給者が大量に発生し標準的な年金額を受け取るようになるまでにはかなりの年数を必要とするため,無拠出年金である福祉年金が経過的な制度として設けられた。…
※「国民皆保険」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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