健康保険は健康保険法(1922制定,27施行)に基づく制度である。当初一部の労働者を対象者としたものであったが,今日では雇用労働者の大部分を対象とし,医療保険の中心的存在となっている。健康保険の保険者には政府および健康保険組合があるが,一般に前者を政府管掌健康保険(政管健保),後者を組合管掌健康保険(組合健保)と呼んでいる。
健康保険組合を設立する際には,被保険者となるべき従業員の過半数の同意を得たうえで規約をつくり,厚生労働大臣の認可を受けなければならない。法律上の設立認可基準は,単一の事業所で設立される単一組合および複数の事業所につき共同で設立される総合組合についても,雇用労働者が300人以上であることとされている。しかし,実際上の取扱基準は前者が700人以上,後者が3000人以上となっている。2006年4月現在,単一組合1267,総合組合279,計1546となっている。また,被保険者は約1554万人,被扶養者約1651万人である。
保険者は保険料を徴収するとともに保険給付を行う。保険料は,第1級9万8000円から第39級98万円までの等級に分類された標準報酬に保険料率を掛けた額が徴収される。政管健保の保険料率は82/1000(2006年3月現在)で,これを被保険者と事業主が折半負担する。組合健保では30/1000から95/1000の間で,各組合の財政状況に応じて保険料率が決定される。負担割合は折半が原則であるが,組合規約により事業主の負担割合を増加させることができる。組合健保の平均保険料率は96年9月現在83.93/1000,その負担割合は事業主の56に対して被保険者44となっている。一方,保険給付については,組合健保は法定給付のほかに,各組合独自に行う附加給付(法定外給付)がある。組合健保が行う他の事業には,組合単位の検診事業,被保険者に対する健康教育,病院・保養所の運営などがある。また,医療費の高額化に伴うリスクを回避するための高額医療費共同負担事業や,財政状態の悪い組合を対象とした財政窮迫組合助成事業が法定化されており,健康保険組合間の共同事業も行われている。
他制度に比べて健保組合の財政は安定的に推移してきたが,バブル経済崩壊後の収入の伸び悩みと医療費,とくに老人医療費負担(老人保健拠出金)の急増により,1995年度以降,経常収支赤字に転落した。このため,老人医療制度,診療報酬および薬価基準の抜本的改革が必要となっている。
執筆者:石本 忠義+大内 講一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(梶本章 朝日新聞記者 / 2007年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
…公務員関係は共済組合であるが,これも年金制度と医療保険をあわせた制度となっている。 まず,民間企業の被用者は健康保険(健康保険法にもとづく医療保険,つまり組合管掌健康保険および政府管掌健康保険をいう。ただし,健康保険という語は医療保険の総称として使われることもある)に加入するが,常時700人以上の被保険者を有する事業所では,それぞれに健康保険組合をつくり独自に運営できる。…
…常時5人以上の雇用労働者を使用する事業所に使用される雇用労働者は,強制的に健康保険の被保険者とされる。健康保険の保険者には,政府と健康保険組合があるが,前者によって運営される健康保険を政府管掌健康保険(政管健保),後者によるものを組合管掌健康保険(組合健保)と呼んでいる。政管健保は,健康保険組合の設立されていない事業所(設立基準等については〈組合管掌健康保険〉の項参照)に使用される雇用労働者および日雇労働者を被保険者として運営されている。…
※「組合管掌健康保険」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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