改訂新版 世界大百科事典 「土地造成」の意味・わかりやすい解説
土地造成 (とちぞうせい)
人間はいろいろな活動を営むために,土地を必要とする。しかし,自然の地形のままでは使いにくいので,高いところを掘削,切土し,その土砂を運搬し,低いところに盛土し,整地して人間が使いやすい平らな用地として整備することが必要となる。このようにして用地を得ることを土地造成といい,このうち水底の土砂の掘削を浚渫(しゆんせつ),水面・湿地帯の盛土を埋立て,また,湿地や干満差のある遠浅の海を堤防で締め切り水位を下げて土地とすることを干拓という。
土地造成は,その用途を明確にして安い費用で使いやすいように仕上げることが必要である。しかし,自然の地形を改変するのであるから,それに伴う環境影響を事前に評価し,人間の生活および生態系に悪い影響を与えないようにしなければならず,さらに,新しいよい環境がつくり出されるよう配慮しなければならない。とくに陸上における土地造成は,生態系のほかに修景を悪くし,切土ののり面の崩壊を誘発しやすくなる。また,森林,緑地の減少は,降雨時,ピーク排水量が多くなり,河川の洪水,ときには土石流を発生させる。したがって,土地造成とともにのり面保護,浸透水の排除,植樹による水の保留,また排水システムの中に雨水貯留施設を配置するなどの処置が必要となる。造成費を安くするためには,切土量と盛土量とを均衡させ,運土作業をもっとも少なくすることが基本である。そのため,工区の設定,土量配分,さらに,土取り,運土,整地などの計画と土木機械の選定がたいせつである。
干拓では,切土,盛土はほとんど必要ない。しかし,水面を締め切る堤防と,内水排除のための水路,遊水池および排水施設を設けなければならない。干拓による土地造成としてはオランダの臨海部や日本の八郎潟などがその代表的なものである。このような土地は水面下になることが多く,安全性は堤防などの施設の強度,管理に依存しており,つねに災害時を考慮した対策も講じておく必要がある。住宅地として利用する場合は,地盤沈下などによって低くなった土地同様,地盤をかさ上げする方法もとられる。大阪の港区,大正区などの臨港部は,安治川を内港化するときの浚渫土でかさあげを行った例である。
埋立ては,初めから地盤の天端高(てんばだか)を高くしておけばよいが,盛土量が大きくなる。とくに旧地盤が軟弱地盤のときは,圧密による地盤の沈下量が大きくなることがあり,そのため重要構造物は基礎を強固にし,また将来の沈下に備えてあらかじめ対策を講じておくことが必要である。
日本における干拓,埋立てによる海面からの土地造成は,第2次世界大戦後30年間に約9万haに達していると見られている。限られた国土において,土地造成は今後さらに需要を増すと思われるが,造成による自然,人間,社会への影響を考慮するほか,工事中においても,粉塵の拡散,汚濁水の流出,振動,騒音などの発生は避けられないので,地下ベルトコンベヤによる運土方式の採用など,施工法についても技術開発がなされている。
→埋立て →干拓 →浚渫
執筆者:長尾 義三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報