結城紬(読み)ゆうきつむぎ

精選版 日本国語大辞典 「結城紬」の意味・読み・例文・類語

ゆうき‐つむぎ ゆふき‥【結城紬】

〘名〙 紬の一種茨城県結城地方の特産で、経(たていと)(よこいと)ともに真綿をつむいだ手紡糸で緻密に織った、地質堅牢な絹織物藍染めが主で、柄はかすりまたは縞で、渋みがある。
※俳諧・毛吹草(1638)三「下総、結城紬(ユフキツムギ)

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デジタル大辞泉 「結城紬」の意味・読み・例文・類語

ゆうき‐つむぎ〔ゆふき‐〕【結×紬】

茨城県結城地方に産する絹織物。縦糸・横糸ともに紬糸で織り、地質は堅牢けんろうかすりや縞を主とする。重要無形文化財、また無形文化遺産に登録。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「結城紬」の意味・わかりやすい解説

結城紬
ゆうきつむぎ

茨城県結城市を中心とする鬼怒(きぬ)川沿いの地域から生産された、伝統的な絹織物。真綿から手紡ぎした糸を使い、藍(あい)染めによる括(くく)り絣(がすり)を施し、地機(じばた)という原始的な手織機で織り上げたものが、本来の結城紬である。結城地方は、鎌倉時代から常陸絁(ひたちあしぎぬ)などの生産がなされ、全国的に有名であった。江戸時代になって、京都西陣(にしじん)から高度な技術を取り入れ、従来無地紬であったものが、型付けや模様染めの反物に変わり、また積極的な振興策とも相まって、農村の副業として栄え、「結城紬」の名も確定した。

 絣織のほうは、1865年(慶応1)から生産が始まり、現在の結城紬につながっている。それは、(1)真綿かけ。繭を温湯の中で指先で広げ、袋状の形に仕上げる。(2)糸紡ぎ。袋真綿ツクシ黍殻(きびがら)を束ねたもの)に絡ませ、その一端より指頭をもって引き出す。細くて節の少ない糸ほどよい。(3)絣括り。経糸緯糸(たていとよこいと)それぞれの糸はデザインによって墨つけをされ、そのところを細い綿糸で固く括る作業。(4)染め。土甕(どがめ)の中で藍建てし、精練した絹糸を、順次色の薄い甕から濃い甕に浸して染める。(5)織り。以上の工程を経て、地機を用いて織物をつくる。一反の織物を織り上げるのに、約50日はかかる。結城紬は、古くから伝統技法を着実に守り、染色も植物か媒染の堅牢(けんろう)染めとしており、糸質強靭(きょうじん)、染色堅牢であることが特徴とされており、1956年(昭和31)には国の重要無形文化財、1977年には通産大臣(現、経済産業大臣)の伝統工芸品に指定され、絣の技法は一段と進歩している。

並木 覚]

 また、2010年(平成22)ユネスコ(国連教育科学文化機関)の無形文化遺産に登録された。

[編集部]


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百科事典マイペディア 「結城紬」の意味・わかりやすい解説

結城紬【ゆうきつむぎ】

茨城県結城地方で産出される紬織物。江戸初期から農家の副業として発達。本来は上質の真綿の手紬糸を植物染料で染め地機で密に平織にするもので,紬の最高級品とされる。1956年重要無形文化財指定。緯(よこ)糸に強撚糸を用いた結城縮(ちぢみ)もある。最近は絹紡糸,綿糸との交織などもあり半工業的に量産される。細かい縞(しま),絣(かすり)に特色があり,渋く感触よく丈夫なので高級な着物,羽織などにする。
→関連項目茨城[県]関城[町]八幡町無形文化遺産保護条約結城[市]

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改訂新版 世界大百科事典 「結城紬」の意味・わかりやすい解説

結城紬 (ゆうきつむぎ)

紬平織の着尺地。単に結城ともいう。産地は茨城県結城市,栃木県小山市にわたる。常陸での養蚕,機織の歴史は古く,奈良時代に綾絹が,平安時代にも紬が献上されている。室町時代にも城主結城氏が幕府に献上,また1602年(慶長7)から12年まで天領であった結城の代官伊奈備前守忠次が信州や京都から織工,染工を招いて改良に努めたといわれ,集散地として知られるようになり結城紬と名づけられた。無地,縞,絣とある。真綿の手紬から製織まで伝統技法を守って一貫生産がなされ,紬と括り絣を経緯に使い居座機(いざりばた)で織る。すべて精緻な手仕事による織物で,渋さと使うほどに味わいの出る紬の最高級品として名高い。明治に入って生産が増大し,1912年には3万反台であった。56年,国の無形文化財,77年,通産大臣の伝統的工芸品に指定される。第2次大戦後も生産量は安定し,現在月産2500反程度を保っている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「結城紬」の意味・わかりやすい解説

結城紬
ゆうきつむぎ

茨城県結城市を中心とする地域で織り出される,絹の紬糸を用いたや縞の着尺地(きじゃくじ。→和服地)。常陸国は 14世紀から紬の産地として知られ,ことに結城は結城一族の居城の地として地方物産の集散地であるところから結城紬といわれるようになった。江戸時代初期に信州上田から織工を招いて以来有名となり,町人のきものとして利用された。江戸時代末期に絣物がつくられ,その堅牢さと,独特の渋さが今日まで世人に愛好されている。1956年国の重要無形文化財に指定。2010年世界無形遺産に登録された。(→紬織

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事典 日本の地域遺産 「結城紬」の解説

結城紬

(茨城県;栃木県)
無形文化遺産」指定の地域遺産。
結城紬は常陸紬などともいわれる。現在の茨城県結城市、栃木県小山市(旧絹村)を中心として古くから製織されてきたもので、慶長年間(1596~1615)頃から結城紬と称された。本来の手法が守られており、伝統的な手工芸による良質のものを生産し続けている。我が国の紬の代表的存在。重要無形文化財(工芸技術:染織)

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世界大百科事典(旧版)内の結城紬の言及

【織物】より

…しかし,このように片手に繊維の塊を持ち,片手の指で撚る方法では繊維を引き出すのに不便であり,その繊維の玉をなにかで支えて自由に両手を使えるようにしたのが〈つくし〉という台の利用である。伝統的な結城紬(ゆうきつむぎ)の紬糸は現在もこの方法によっている。また膝上で回転させていた錘も,膝のかわりに手代木(てしろぎ)とか糸撚台(つむじだい)といわれる簡単な道具を用いて平均した回転を与え,さらにそれを空間で回さずに,回転を助けるなんらかの〈うけ〉の上で回すことが工夫されるようになった。…

【紬糸紡績】より

…こうして作った紬糸(つむぎいと)を経(たて)・緯(よこ)に使って,無地,絣(かすり)模様,縞(しま)に織ったのが紬である。茨城県結城(ゆうき)市および栃木県小山市をそれぞれ中心とする地域で生産される結城紬は,経糸に180~210デニール,緯糸に110~120デニールくらいの太さの紬糸を使い,縞または絣模様に織った平織の着尺地である。綿織物のように見えるが,絹独特の底光りがするので,高級な着物地,羽織地として好まれる。…

【紬】より

…紬糸とは,真綿もしくはくず繭から引き出して紡いだ糸をいう。引出し紡といって,〈つくし〉という枠にかけた真綿から指先で手前へ糸を引き出してとる結城紬(ゆうきつむぎ)の糸とりが,これの代表的なものであるが,最近はこの手紬糸に対し,機械紡の行われている産地が多くなっている。また今日では必ずしも紬糸によらない織物でも,できあがった織りの風合いが紬らしい粗い感じをもっているものを〈紬〉と称していることもある。…

※「結城紬」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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