松川(読み)まつかわ

日本歴史地名大系 「松川」の解説

松川
まつかわ

最上川上流部の呼称で、現在正式には同川の本流とされる。しかし近世の史料ではほとんど松川とみえ、現在もしら川との合流点長井市河井かわいまでを松川と通称している。米沢市南部の吾妻あづま山系大日だいにち岳に源を発し、北流して旧米沢城下の東を北流し、米沢市街北東うちで当川東を北西流してきた羽黒はぐろ川と、下新田しもにいだ北で天王てんのう(梓川)東置賜ひがしおきたま川西かわにし洲島すのしまで米沢市街西方を北流してきた鬼面おもの川を合せる。米沢盆地は当川・羽黒川の形成した扇状地

慶長六年(一六〇一)上杉氏が米沢へ入部した頃には、城下おお町付近を当川支流が流れていたという。


松川
まつかわ

上高井郡東北部上信国境いけとう山から発し、左右諸山の水を合わせて高山たかやま村を西に貫流。小布施おぶせ町の南を限り、同町大島おおじまで北折、同町飯田いいだで千曲川に入る。延長約二四キロ。

中流五色ごしき温泉から小布施町境までは峡谷となり、かみなり(落差四〇メートル、裏見の滝)、急湍のこぎり滝があり、山田やまだ温泉には比高六〇メートルの高井たかい橋がある。右岸にかさヶ岳西方から発する鎌田かまだ川、三沢みさわ山から発する淵ノ沢、右岸においくらから発する柞沢たらざわ川、御飯おめし岳から発する樋沢ひざわ川がある。下流両側に松川扇状地(右扇小布施、左扇高井野原たかいのはら日滝原ひたきはら)を形成。


松川
まつかわ

奥羽山脈の大深おおふか(一五四一・四メートル)に源を発し、松尾村を東流して西根にしね町・玉山たまやま村境であか川を合流、玉山村下田しもだで北上川に注ぐ。全長約三一・四キロの一級河川。おもな支流に赤川・きたまた川などがある。正保国絵図に松川とあり、「山川故少雨ニモ洪水」と記される。上流にある松川湯は名湯として知られ(邦内郷村志)、「雑書」承応二年(一六五三)八月一五日条によれば、「松河へ湯汲」に人を派遣しており、天和二年(一六八二)八月二五日条には「松川へ湯治」と記される。甲地かつち山・北ノ又山から春木が伐り出され、落合おちあいから筏流しが行われた。


松川
まつかわ

木曾山脈の南部、念丈ねんじよう(二二九一メートル)安平路あんぺいじ(二三六三メートル)から発し、飯田市かなえ町の境を東流し、下流で上郷かみさと町の野底のそこ山から流出した野底川を合わせて天竜川に注ぐ。全長約一八キロ。

室町時代から右岸の伊賀良いがら扇状地に伊賀良井や新井が引かれ、江戸時代には飯田藩下郷しもごう(松川以南の村々)を灌漑した。左岸の飯田台地には御用水ごようすい井が引かれて上飯田かみいいだ(現飯田市)を灌漑し、飯田城・城下町にも引水された。渇水時には伊賀良井と御用水井の水論が度々起こったが、松川一番堰として横一文字堰切りの特権をもつ伊賀良井が優位に立つことが多かった。


松川
まつかわ

旧神通川の流路の一部で、江戸時代、富山城の北側を東流していた同川の名残をとどめる。現在の上流端は富山市西田地方にしでんじがたで、佐野さの川とつめた川が富山市布瀬ぬのせ町の万寿まんじゆ橋付近で合流して松川となる。万寿橋から護国ごこく神社の裏手まで神通川と並流するが、同社裏手で神通川の水を一部取込み、東に湾曲し、今木いまき橋付近でいたち川に合流する。流路延長二・二キロ。明治三四年(一九〇一)一月神通川の度重なる洪水を防止するために、東に大きく湾曲していた河道を真っすぐに付替える馳越線の工事が始まり、同三六年五月に完成、神通川は直流するようになった。


松川
まつかわ

白石しろいし川の支流、みや集落東部で合流する。刈田岳山頂付近に発するすみ川と五色ごしき岳などから流下するにごり川が遠刈田とおがつた温泉の西で合流し、松川となる。円田えんだ曲竹まがたけ・宮の各地区を東南流する。全長約二〇キロ。「封内風土記」に「清川其源出自不動瀑布入松川」とみえ、「宮村安永風土記」には「水上は当村蔵王嶽之内不動滝より出、最初は清川と申当村冷水堂と申所より松川に罷成」とある。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「松川」の意味・わかりやすい解説

松川[村] (まつかわ)

長野県北西部,北安曇(きたあずみ)郡の村。人口1万0093(2010)。松本盆地北部に位置し,西部は飛驒山脈の山麓に広がる神戸原(ごうどはら)扇状地,東部は高瀬川下流の沖積地で,古くからの水田単作地帯をなすが,高瀬川の水を利用して第2次大戦後開拓されたところが多い。近年は野菜,果実,花卉の栽培や畜産が増え,特にキュウリは出荷高が多い。JR大糸線,国道147号線が東部を縦貫し,松本市や大町市への交通の便がよいため,住宅地の開発が進められ,人口は増大している。県内最古の仏像といわれる銅造菩薩半跏像は重要文化財。
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松川[町] (まつかわ)

長野県南部,下伊那郡の町。人口1万3676(2010)。伊那盆地のほぼ中央,天竜川の沿岸に位置し,西は飯田市に接する。中心の大島は江戸時代に伊那往還の宿駅として栄えた。天竜川西岸には河岸段丘が発達し,段丘面でリンゴ,梨などの果樹栽培をはじめ米作,畜産,野菜栽培などが行われる。中央自動車道松川インターチェンジの開設もあって,電子部品などの工業生産が進展している。北東部には小渋ダム,西部には松川高原がある。天竜川沿いにJR飯田線,国道153号線が通じる。上片桐の船山城跡は県史跡。
執筆者:


松川[温泉] (まつかわ)

岩手県北西部,八幡平市の旧松尾村にある標高800mの山峡の温泉。単純硫化水素泉,42~86℃。付近の影沼,御護(おご)沼にはかつてモリアオガエルが生息していた。温泉の奥には1966年日本で最初に実用化された松川地熱発電所がある。十和田八幡平国立公園の東八幡平温泉郷に属し,湯治客のほか登山者やスキー客も年々増加している。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「松川」の意味・わかりやすい解説

松川(町)
まつかわ

長野県南部、下伊那郡(しもいなぐん)の町。1956年(昭和31)下伊那郡大島村と上伊那郡上片桐(かみかたぎり)村が合併して町制施行。1959年生田(いくた)村を編入。町名は、木曽(きそ)山脈から流出して旧両村の境界を東流する松川による。町の中央を天竜川が南流し、河谷では米作、段丘上ではナシやリンゴの栽培が盛ん。天竜川右岸を東から国道153号、JR飯田(いいだ)線、中央自動車道が南北に走り、松川インターチェンジがある。面積72.79平方キロメートル、人口1万2530(2020)。

[小林寛義]



松川(村)
まつかわ

長野県西部、北安曇郡(きたあずみぐん)の村。北アルプスの前山有明(ありあけ)山などの山麓(さんろく)、松本盆地北部を占める。JR大糸線、国道147号(糸魚川(いといがわ)街道)が南北にほぼ並行して走る。高瀬川とその支流乳川(ちがわ)の扇状地にあり、乏水性であるが、扇央部一帯は近世以降開拓され、水田化している。米、リンゴ、花卉(かき)を主にした純農村。面積47.07平方キロメートル、人口9599(2020)。

[小林寛義]



松川
まつかわ

福島市南端の一地区。旧松川町。福島盆地南縁にあり、江戸時代は奥州道中の八丁目宿があって繁栄した。JR東北本線松川駅の東側には電気機器の北芝電機の工場が立地する。国道4号(福島南バイパス)が通じ、東北自動車道福島松川スマートインターチェンジがある。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「松川」の意味・わかりやすい解説

松川[温泉]【まつかわ】

岩手県八幡平市,松倉山北麓の松川に沿う温泉。単純硫化水素泉。86℃。八幡平(はちまんたい),岩手山の登山基地。地熱発電所(出力2万kW)がある。付近の影沼,御護(おご)沼はモリアオガエル繁殖地(天然記念物)。花輪線大更(おおぶけ)駅からバス。
→関連項目岩手山

松川[町]【まつかわ】

長野県南部,下伊那郡の町。東は伊那山地,西は木曾山脈の山地で,中部の伊那盆地に主集落元大島があり飯田線,中央自動車道が通じる。ナシ,リンゴなどの果樹栽培が盛ん。精密機械,電子部品の工場もある。72.79km2。1万3676人(2010)。

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事典・日本の観光資源 「松川」の解説

松川

(富山県富山市)
とやまの名水66選」指定の観光名所。

出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報

世界大百科事典(旧版)内の松川の言及

【長井盆地】より

…南北約20kmの細長い断層盆地で,玉庭丘陵北端部の眺山(324m)と白鷹丘陵南端の今泉山(282m)を結ぶ丘陵が米沢盆地との境をなす。米沢盆地を貫流してきた松川(最上川の上流)がこの丘陵の狭い伊佐沢峡を通って長井盆地に流入し,置賜白川を合流して盆地東縁を北流する。盆地西縁は朝日山地の南東縁を画する大実淵山断層と葉山断層によって境され,これに沿って盆地西半は大小の崖錐(がいすい)や扇状地が並ぶ合流扇状地を形成し,続いて高・中位段丘が発達している。…

※「松川」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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