九州電力(読み)きゅうしゅうでんりょく

百科事典マイペディア 「九州電力」の意味・わかりやすい解説

九州電力[株]【きゅうしゅうでんりょく】

1951年電力再編成で九州配電,日本発送電(一部)の事業を継承して設立。もともとの前身は,九州水力,東邦電力,九州電軌など。9電力会社の一つ。供給区域は九州一円。一貫して火力中心に発電事業を展開してきたが,離島発電が多く,また水力発電所や佐賀県玄海町の玄海原発(1〜4号機,1975年〜1997年に運転開始,いずれも加圧水型軽水炉,3号機は日本初のプルサーマル利用),鹿児島県川内市久見崎町の川内原発(1〜2号機,1984年・1985年運転開始,加圧水型軽水炉。計画中の3号機は改良型加圧水型軽水炉で,2019年運転開始予定),さらに地熱発電などを有する。2011年3月の東京電力福島第一原発事故後,6月に放送された玄海原発2,3号機の運転再開に向け経産省が主催した佐賀県民向け説明会で,九州電力が関係会社の社員らに運転再開を支持する文言の電子メールを投稿するよう指示していた事が発覚批判を受けた。原発は2013年5月現在稼働していないが,原子力規制委員会が4月に発表した新規制基準案(7月実施)に対応することで,早期の再稼働を目指している。ただし,過酷事故対策,地震・津波対策のみならず,玄海,川内両原発とも160km圏内に火山があり,再稼働審査は長期化すると見られていたが,2013年7月九州電力は再稼働申請を提出,原子力規制委員会は大きな不備はないとして審査を進める方針を明らかにした。2014年3月,原子力規制委員会は川内原発の審査を最優先すると発表,玄海原発の審査は川内原発の次となる模様である。川内原発については,反対派や慎重論を唱える火山学者・市民公聴会の開催を鹿児島県など自治体に求めているが,自治体は消極的である。住民の一部は,5月鹿児島地裁に川内原発の運転差し止めを求める民事訴訟を申し立てた。原発の耐震安全性が不十分などと主張する住民側に対し,九電側は安全性は十分だとして申請の棄却を求めている。川内原発1号機では再稼働に向けて国の原子力規制委員会が現地で検査する〈使用前検査〉が2015年3月末に始まった。九電は7月上旬にも原子炉を起動させて再稼働させる方針。しかし仮処分が認められると,再稼働時期が当面見通せなくなる可能性がある。九電は,2015年3月玄海原発1号機を廃炉にすることを決めた。また運転開始から34年になる玄海2号機についても,運転を継続するか廃炉にするか検討している。本社福岡。2011年資本金2373億円,2011年3月期売上高1兆3875億円。売上構成(%)は,電気95,その他5。→電気事業

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「九州電力」の意味・わかりやすい解説

九州電力(株)
きゅうしゅうでんりょく

業界第4位の民間電力会社。供給区域は九州7県で、1951年(昭和26)電気事業再編成の一環として、沖縄を除く旧九州配電の供給区域を継承して設立された。他の電力会社とは異なり、設立時から火力発電所の出力が水力発電所の出力を上回っていたが、これは、産炭地に立地していることを反映したものであった。一方、産炭地立地であったため、火力発電用燃料の石炭から石油への転換は遅れ、油主炭従化は1970年度までずれ込んだ。九州電力は、1967年に9電力会社初の地熱発電所である大岳(おおたけ)発電所の運転を開始した。原子力開発にも力を入れ、1975年に佐賀県松浦郡で玄海(げんかい)原子力発電所、1984年に鹿児島県で川内(せんだい)原子力発電所を、それぞれ運転開始した。資本金2373億円(2008)、売上高1兆3921億円(2008)。販売電力量881億キロワット時(2007年度)。玄海原子力、新小倉火力など、多数の発電所をもつ。現在、プルサーマル発電を行う準備を進めているが、このプルサーマル発電とは、原子力発電の使用済み燃料から回収したプルトニウムとウランとを混合したMOX燃料(Mixed Oxide=混合酸化物燃料)を、一般的な原子力発電所で再利用することである。九州電力は、離島での電力供給の安定化に一貫して取り組んでおり、2005年(平成17)には、長崎県の松島変電所と五島(ごとう)列島の奈良尾(ならお)変電所とを結ぶ交流の海底送電線を運転開始した。

[橘川武郎]

『九州電力株式会社編・刊『九州電力50年史』(2001)』『橘川武郎著『日本電力業発展のダイナミズム』(2004・名古屋大学出版会)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「九州電力」の意味・わかりやすい解説

九州電力
きゅうしゅうでんりょく

電力会社。 1951年の電気事業再編成令により九州配電と日本発送電の共同出資で設立。 72年西日本共同火力,73年大島電力を合併。電力供給区域は沖縄を除く九州一円 (離島を含む) 。原子力,LNG (液化天然ガス) ,地熱など脱石油を目指して電源多様化に努めている。年間販売電力量 699億 kWh。発電設備は認可最大出力 1817万 2000kW。事業内容は,電力 56%,電灯 40%,その他4%。年間営業収入1兆 4301億 6300万円 (連結) ,資本金 2373億 400万円,従業員数1万 4445名 (1999) 。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本の企業がわかる事典2014-2015 「九州電力」の解説

九州電力

正式社名「九州電力株式会社」。英文社名「Kyushu Electric Power Company, Incorporated」。電気・ガス業。昭和26年(1951)設立。本社は福岡市中央区渡辺通。電力会社。供給区域は沖縄県を除く九州地方全域。工場など産業向け供給比率が高い。オール電化住宅の普及にも注力。東京証券取引所第1部・福岡証券取引所上場。証券コード9508。

出典 講談社日本の企業がわかる事典2014-2015について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android