地理的表示保護制度(読み)チリテキヒョウジホゴセイド(その他表記)geographical indications

デジタル大辞泉 「地理的表示保護制度」の意味・読み・例文・類語

ちりてきひょうじ‐ほごせいど〔チリテキヘウジ‐〕【地理的表示保護制度】

産地と結びついた品質や社会的評価を備えた農林水産物や食品に付される地理的表示知的財産として保護する制度GI(geographical indications)制度。

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共同通信ニュース用語解説 「地理的表示保護制度」の解説

地理的表示(GI)保護制度

特別な生産方法や歴史のある農林水産物などを、産地名を冠した地域ブランドとして保護する制度。国際貿易が盛んな欧州が発祥で、フランスの「シャンパン」などが有名。国内での指定は酒類を国税庁、それ以外の作物を農林水産省が担う。酒類では日本酒の他にも山梨のワイン、和歌山の梅酒、壱岐(長崎)の焼酎などがGIに指定されている。名称のほかGIマークの使用が認められ、不正使用は行政の取り締まりの対象とされているが、国税庁によるとこれまでに摘発例はない。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「地理的表示保護制度」の意味・わかりやすい解説

地理的表示保護制度
ちりてきひょうじほごせいど
geographical indications

農産物の優れた品質や社会的評価が、地理的な気候や風土、歴史などに由来する特徴として原産地と関連づけられる場合、知的財産としてその名称を保護する制度。地理的表示とは単なる産地名ではなく、生産地として長年培われてきた品質と信頼産品の特徴を示すもので、これを表示することによって他との差別化をはかることができたり、価格や輸出などの面でプラスの効果が期待できる。2014年(平成26)6月に成立した「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律(地理的表示法)」(平成26年法律第84号)に基づき、翌2015年6月から運用が開始された。略称はGIで、地理的表示制度ともいう。

 地理的表示を求める地域の生産・加工業者団体は、農林水産省の専門窓口である地理的表示保護制度活用支援窓口(GIサポートデスク)などを通じて登録申請を行う。これに対し、農林水産大臣が生産方法や特性、伝統性などについて審査を行い、認定の可否が判断される。生産者は登録された団体に加盟すれば、地理的表示が利用できるようになる。なお、罰則を伴う不正の取締りを行政が行う点が、これまでの農産物に関する制度とは異なる点である。これと類似した制度として、地域ブランドの育成を目的とした地域団体商標制度があるが、品質を制度的に担保することはできない。これに対し地理的表示保護制度は申請時に品質基準を定めて公示し、登録を受けた生産団体が品質管理を実施し、団体の品質管理体制を農林水産大臣がチェックする。また、登録期間が無制限であることなども、地域で伝統的に受け継がれている生産方式の産品に適した制度になっている。登録産品には地理的表示と専用のGIマークを付すことが可能になる。登録商標であるGIマークは、海外で日本の地理的表示であることをわかりやすく伝えることを考慮し、大きな日輪と富士山モチーフにデザインされている。

 世界的にブランド農産品の多くは地理的表示によるものが多い。たとえば、イタリアの生ハムのプロシュート・ディ・パルマやシチリア蜂蜜(はちみつ)、フランスのシャンパンやチーズのカマンベール・ド・ノルマンディー、スイスのグリュイエールチーズなど、原産地の名称が産品を特徴づける基準として利用されている。もっとも加盟国の多い国際的な地理的表示制度は、世界貿易機関(WTO)のTRIPS協定(Agreement on Trade-Related Aspect of Intellectual Property Rights、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定)であり、世界110か国あまりの加盟国では、この規定を踏まえた国内法令が整備されている。日本ではこれまで酒類だけがTRIPS協定に基づき、石川県の日本酒「白山(はくさん)」、鹿児島県の焼酎(しょうちゅう)「薩摩(さつま)」など6種類が指定されていた(2015年7月時点)。地理的表示法が成立したことで、酒類だけでなく、対象が農産物全体に広がった。

[編集部]

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知恵蔵 「地理的表示保護制度」の解説

地理的表示保護制度

地域産品が、長年培われた特別の生産方法や気候・風土・土壌などの生産地の特徴により高い品質と評価を獲得している場合、その産品の名称(地理的表示)を知的財産として保護する制度。日本では、2014年6月に地理的表示法(特定農林水産物等の名称の保護に関する法律)が成立し、15年12月から登録が始まった。16年7月末現在、神戸ビーフや夕張メロン、三輪素麺(そうめん)など14産品の地理的表示が登録されている。
地理的表示保護制度が保護の対象としているのは、品質などの特性が産地と結びついており、その結びつきを特定できるような名称(地理的表示、GI:Geographical Indication)が付されている農林水産物やその加工品。酒類や医薬品などは地理的表示法の対象とならない。生産者や加工業者の団体が品質管理の方法などを定めて申請し、手続きを経て登録されると地理的表示とGIマークを使用できる。登録された品質基準に満たない模倣品などによる地理的表示の不正使用に対しては、農林水産大臣が不正表示の除去や抹消を命令し、従わない場合には罰則を科す。このように国が地域産品の品質を保証し、一定の品質のものだけが市場に流通するようにすることで、生産者と需要者の利益を保護する狙いである。
海外ではEU(欧州連合)の地理的表示保護制度がよく知られているが、その他にも70カ国以上が独自の制度で地理的表示の保護を図っている。EUの地理的表示保護制度は、生産・加工・調製の全ての工程を地域で行う産品を対象とするPDO(原産地呼称)と、一部の工程を地域内で行う産品を対象とするPGI(地理的表示)の2種類があり、登録された地域産品の価格上昇などに一定の効果が認められている。

(原田英美 ライター/2016年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

知恵蔵mini 「地理的表示保護制度」の解説

地理的表示保護制度

産品の名称(地理的表示=GI)を知的財産として保護する制度。産地名などを含んだ特産物の名称を国が地域ブランドとして登録することにより、生産者の利益と消費者の信頼の増進を図るもの。日本では2014年6月に「特定農林水産物等の名称の保護に関する法律」(地理的表示法)が制定され、15年6月1日から地理的表示保護制度の運用が開始された。生産者などでつくる団体の申請に基づき国(農林水産省)が審査し、基準を満たした産品に「GIマーク」の使用が許可される。

(2015-6-2)

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