小説家。本名杉浦英一。名古屋市生まれ。海軍特別幹部練習生として終戦(第二次世界大戦)。一橋大学で理論経済学を学び、卒業後愛知学芸大学の教員となる。中京財界史をまとめたことから、経済界の裏面の人間模様に関心をもち、創作活動にはいる。商社マンの苛烈(かれつ)な生きざまを描いた中編『輸出』(1957)で文学界新人賞、経済界の裏面を暴いた『総会屋錦城(きんじょう)』(1958)で直木賞受賞、経済小説の先駆者として注目された。日本金融界の中枢をなす巨大組織日本銀行とそこに生きる人間を描いて、戦後の不況とインフレの時代相を浮かび上がらせた『小説日本銀行』(1962)。巨大商社鈴木商店が米騒動がらみの焼き打ちにあったときから昭和初頭に倒産するまでの経緯を、そこの大番頭金子直吉を軸に描いて経済恐慌の時代を実感させる『鼠(ねずみ)』(1966)。『輸出』の主要人物のその後を扱って、商社マンの左遷や定年の悲哀を感じさせ、のちに流行語ともなった『毎日が日曜日』(1976)。どの代表作をとっても、経済の仕組みを描いている点で経済小説であるとともに、組織とそこに生きる人間を十分に描いている点で、一種の社会小説ともいえる。他方、自伝的作品『大義の末』(1959)から『一歩の距離――小説予科練』(1968)を経て、『指揮官たちの特攻』(2001)に至る戦中派的心情を描いた作品があり、その心情は経済小説のそこここにも見え隠れしている。乗取り、倒産、価格破壊といった経済現象も、つねに人間を軸に描くのが城山文学の魅力である。その人間の魅力を最大限に描き切った作品群が伝記小説で、日本最初の公害問題に挑んだ正義の人田中正造(しょうぞう)の生涯を描いた『辛酸(しんさん)』(1962)、近代日本最大の経済人渋沢栄一の生涯を描いた『雄気堂々』(1972)、第二次世界大戦後文官としては唯一戦犯として処刑された元総理大臣広田弘毅(こうき)の生涯を描いて、吉川英治文学賞と毎日出版文化賞を受賞した『落日燃ゆ』(1974)などがある。また、16世紀末の堺の貿易商呂宗助左衛門(るそんすけざえもん)(納屋助左衛門)の活動を描いた歴史小説『黄金の日日』(1978)は、NHKの大河ドラマとして放映され、好評を博した。
[山田博光]
『『毎日が日曜日』(1976・新潮社)』▽『『城山三郎全集』全14巻(1980~81・新潮社)』▽『『城山三郎伝記文学選』全6巻(1998~99・岩波書店)』▽『『指揮官たちの特攻――幸福は花びらのごとく』(2001・新潮社)』▽『『城山三郎昭和の戦争文学』全6巻(2005~06・角川書店)』▽『『小説日本銀行』(角川文庫)』▽『『鼠――鈴木商店焼討ち事件』(文春文庫)』▽『『総会屋錦城』『落日燃ゆ』(新潮文庫)』▽『『辛酸――田中正造と足尾鉱毒事件』(中公文庫)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 日外アソシエーツ「367日誕生日大事典」367日誕生日大事典について 情報
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