塩化パラジウム(読み)えんかパラジウム(その他表記)palladium chloride

改訂新版 世界大百科事典 「塩化パラジウム」の意味・わかりやすい解説

塩化パラジウム (えんかパラジウム)
palladium chloride

パラジウム(Ⅰ),(Ⅱ),(Ⅳ)塩が知られているが,(Ⅱ)塩が最も重要。

化学式PdCl2。無水和物と2水和物が知られている。無水和物は赤~橙赤色,吸湿性の結晶融点500℃。塩酸やアルカリ金属塩化物の水溶液によく溶け,テトラクロロパラジウム(Ⅱ)酸イオン[PdCl42⁻を生成する。種々の錯体をつくる出発物質となる。無水和物の構造は図に示すような無限に連なった平面鎖状をしている。水溶液からは2水和物PdCl2・2H2O(赤褐色)が結晶化する。また,水溶液に水素を通すと容易に還元が起こって金属パラジウムが沈析する(この反応は混合気体中の微量の水素を検出するのに利用される)。無水和物は,パラジウムを塩素中で加熱反応させても,また塩素を通しながら溶かした塩酸溶液を蒸発させても得られる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化パラジウム」の意味・わかりやすい解説

塩化パラジウム
えんかぱらじうむ
palladium chloride

パラジウムと塩素の化合物。酸化数Ⅰ、Ⅱ、Ⅳの化合物が知られているが、もっとも安定なのはⅡの場合である。

 塩化パラジウム(Ⅱ)無水和物は、パラジウムを赤熱しながら塩素と反応させることによってつくられる。また、パラジウムを王水に溶かしてH2[PdCl4]溶液とし、これを加熱することによっても得られる。この方法で製造したものは水に溶けず、塩酸にかろうじて溶けるだけである。これは赤色、等軸晶系の結晶であるが、別の変態も知られている。二水和物は水溶液から得られる暗赤色、柱状の結晶で、潮解性がある。水溶液はきわめて還元されやすく、一酸化炭素、エチレンメタンなどの還元性の気体を通ずると、黒色の金属パラジウムを析出する。メタノールメチルアルコール)の蒸気を含んだ一酸化炭素を無水和物上に通ずると、PdCl2・COのような付加化合物を生じる。これを利用して一酸化炭素の検出試験紙がつくられる。そのほか医薬などにも用いられる。

[鳥居泰男]


塩化パラジウム(データノート)
えんかぱらじうむでーたのーと

塩化パラジウム(Ⅱ)
  PdCl2
 式量  177.3
 融点  678℃
 沸点  -
 比重  -
 結晶系 等軸
 分解点 680℃

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

化学辞典 第2版 「塩化パラジウム」の解説

塩化パラジウム(Ⅱ)
エンカパラジウム
palladium(Ⅱ) chloride

PdCl2(177.33).二塩化パラジウムともいう.パラジウム粉末に塩素を通じ加熱すると得られる.赤色を帯びた斜方晶系結晶.600 ℃ で昇華し,パラジウムと塩素に分解する.水溶液から二水和物が得られる.二水和物は赤褐色の柱状結晶.水,エタノールに溶けて黄褐色の溶液となる.加水分解して塩化酸化物となる.水素により容易に還元されるので,水素の検出に用いられる.そのほか,写真薬品,マジックインキ,ガラスや陶磁器の着色剤,パラジウムめっき,パラジウム触媒の製造,パッチテスト試薬などに用いられる.[CAS 7647-10-1]

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

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