日本大百科全書(ニッポニカ) 「塩化パラジウム」の意味・わかりやすい解説
塩化パラジウム
えんかぱらじうむ
palladium chloride
パラジウムと塩素の化合物。酸化数Ⅰ、Ⅱ、Ⅳの化合物が知られているが、もっとも安定なのはⅡの場合である。
塩化パラジウム(Ⅱ)無水和物は、パラジウムを赤熱しながら塩素と反応させることによってつくられる。また、パラジウムを王水に溶かしてH2[PdCl4]溶液とし、これを加熱することによっても得られる。この方法で製造したものは水に溶けず、塩酸にかろうじて溶けるだけである。これは赤色、等軸晶系の結晶であるが、別の変態も知られている。二水和物は水溶液から得られる暗赤色、柱状の結晶で、潮解性がある。水溶液はきわめて還元されやすく、一酸化炭素、エチレン、メタンなどの還元性の気体を通ずると、黒色の金属パラジウムを析出する。メタノール(メチルアルコール)の蒸気を含んだ一酸化炭素を無水和物上に通ずると、PdCl2・COのような付加化合物を生じる。これを利用して一酸化炭素の検出試験紙がつくられる。そのほか医薬などにも用いられる。
[鳥居泰男]