日本の国籍を有しない会社で,内国会社に対する。外国会社は民法36条により日本でもその法人格が認められ,営業活動も許される。ただし,営業活動を行う場合は商法479条以下,または有限会社法76条以下で定める手続を採らねばならない。
(1)外国会社の概念 会社の内外の区別には,(a)ドイツ,フランスで採用されてきた業務指揮機関(事実上の本店)の所在地を基準とする主義,(b)設立手続がどの国で行われたかによる英米で採用される設立準拠法主義,(c)営業活動の中心施設の所在地による主義,(d)取締役,業務執行社員,株主などの国籍を実質的に考慮する管理者主義,などがある。管理者主義は,日本国籍の船舶や航空機(船舶法1条,航空法4条)のような公益性をもつ権利の享有が認められるかの問題や,戦時における敵国の公私の財産の差押えの場合の敵性法人の決定基準として採用される。商法479条の外国会社の基準としては,設立準拠法主義が通説,判例の立場(大審院1918年12月16日決定)である。商法479条以下の規定(および有限会社法76条)は,日本の会社に相当する営利団体が,日本で内国会社と同程度の営業をする場合に,内外会社の不均衡が生じないための規制をすることを目的とするものであるから,外国の株式会社やかつて日本でも存在した株式合資会社が包含せられることは,問題ない。ただドイツの合名会社のように本国法では形式的には法人でないものが包含されるかが問題となるが,本国法上法人であるか否かを問わないと解するのが通説,判例の立場(大審院1905年4月17日判決)である。英米におけるジェネラル・パートナーシップgeneral partnershipやリミテッド・パートナーシップlimited partnershipなども,合名会社,合資会社に準ずるものと解するのが通常である。また1975年4月3日EC委員会提案の〈ヨーロッパ株式会社〉は,構成国株式会社の国際合併を容易ならしめ,国際的競争力を強化するため,EEC条約に基づき法人格が付与される会社であるが,その本質は私法人であり,外国株式会社と同一の扱いを受けることとなろう。さらに第2次大戦後ひろく各国で採用されている国家介入事業体のうち,会社形態を採るものは,政府と民間が共同出資している会社であると国公有会社であるとを問わず,競争原理に服し,私法適用を原則とするものは,商法上外国会社と考えられる。これに対し,公法人ながら商工業的活動を営むフランス電力公社,イタリアの産業復興公社(IRI(イリ))のような組織については,行政的機能を営む公法人との限界が明確でない点はあるが,登記制度を整備することにより,外国株式会社に準ずる活動を認めるべき時期にきているといえよう。
(2)監督規定 外国会社も,銀行・保険のような特定の営業については,営業許可を受けることが必要であるが,会社の一般的活動については内国会社と平等の待遇が与えられ,同時に内国会社に準じた規制が課せられている。継続取引をする場合は,日本における営業所設置,代表者選任により,日本において人的・物的組織を設けるとともに,公示のため営業所設置登記をしなければならない。日本における代表者は,本国の代表取締役と同じく,在日営業所の取引に限らず,その外国会社のいっさいの事項について代表権あるものとされる。また外国会社が日本に営業所を設けたときは,その外国会社との間で日本国外で生じた法律問題についても,国際的裁判管轄が認められ,その外国会社を被告として日本で提訴できると解するのが判例の立場である(大審院1905年2月15日決定,ならびに最高裁1981年10月16日判決)。日本に取締役会など事実上の業務指揮の中心機関があり,あるいは主たる営業活動地が日本であるが,設立手続はアメリカのデラウェア州で行われているような外国会社は,日本法の厳格な設立手続を免れるため,外国会社として設立されたものとして,日本における継続取引は認められない。アメリカでは,他の州の法人は連邦憲法修正14条でいう〈人〉と解され,法人格は相互に承認される。しかも実質的には自州内で活動しているような場合は,ニューヨーク州やカリフォルニア州のように他州法人に自州会社法の重要な規定を適用することにより,設立準拠法主義の弊害を防止することがある。日本はいっさいの内国活動を禁止しているものといえよう。そのほか外国会社が密貿易のような日本の公益に反する行為を繰り返すとか,登記はしたが現実には営業をしていないとき,あるいは正当な事由がないのに支払いを停止した場合などには,営業所閉鎖命令が出される。また日本営業所の閉鎖により会社財産が本国に引き揚げられると,日本の債権者は取立てのための訴訟や強制執行が困難となるから,日本にある財産を限度として,いわゆる属地的清算手続が命ぜられることがある。なお外国銀行(銀行法47条)などには特別の監督規定がある。
→外国法人
執筆者:岡本 善八
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…それは,同じような生活関係であっても,個人が当事者である場合と会社が当事者である場合とでは法規制が異なることがありうるわけであるから,どのような法規制が加えられるかということを明らかにするためには,法の適用対象となる生活関係を概念的に限定せざるをえないことによるのである。(2)商事会社・民事会社,外国会社・内国会社 商法では,商行為の営業を目的として設立された社団を固有の意味の会社(商事会社)とし,さらに,商行為の営業を目的とはしなくても,営利目的で設立された社団を〈みなし会社(民事会社)〉としている(商法52条)。したがって,法概念としての〈会社〉とは,商事会社と民事会社の総称ということができる(保険業に認められている相互会社は,商行為をも営利をも目的とするものではないから,ここでいう会社にはあたらない。…
※「外国会社」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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