日本大百科全書(ニッポニカ) 「多色印刷」の意味・わかりやすい解説
多色印刷
たしょくいんさつ
2色以上の色を刷り重ねる印刷。印刷では銀塩カラー写真やカラーテレビと異なり、紙の上に一度に2色以上の印刷をすることはできず、色数だけの版をつくって順次刷り重ねていく。この場合、黒(印刷では墨という。ブラックblack)のほかに、たとえば赤を入れるような2色印刷や、さらに青を入れるような3色印刷も多色印刷であり、黄(イエローyellow)、赤(紅、マゼンタmagenta)、藍(あい)(シアンcyan)の3色に墨を加えた、いわゆる原色版印刷も多色印刷である。2色印刷は、たとえば文字の部分を墨刷りとして挿絵を青で刷るような場合で、刷り上がりを見ても、ほぼ2色の表現である。
3色以上の多色印刷は濃淡の調子のある網版を黄、赤、藍の3色分つくり、刷り重ねることによって、3色はもちろん、あらゆる色(フルカラー、天然色)を表現する。両者とも、インキの色数分の版をつくるには、手作業的につくるか、写真を利用して3色分解をするか、エレクトロニクスを応用したカラースキャナーを使用する。3色分解のほとんどはカラースキャナーを利用し、各インキの色調の補正もこの機械を利用する。
以前の印刷には1色ずつ刷る単色の印刷機で順次刷り重ねたが、現在では多色を一度に刷れる印刷機で刷り重ねる。多色機には2色機や4~8色機が多く、紙の表に4色、裏に4色を刷り重ねて乾燥し、さらに折りまで行う機械もある。この種の機械を使って印刷するときは、初めに刷った色インキの上に次の色インキがのり、絵模様がずれることなく刷り重ねられなければならない。色インキの刷り重ねの順序は、昔は黄、赤、藍、墨であったが、いまは墨、藍、赤、黄が多い。
[山本隆太郎]