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大動脈炎症候群(高安動脈炎/脈なし病) だいどうみゃくえんしょうこうぐんたかやすどうみゃくえんみゃくなしびょう Aortitis Syndrome

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家庭医学館の解説

だいどうみゃくえんしょうこうぐんたかやすどうみゃくえんみゃくなしびょう【大動脈炎症候群(高安動脈炎/脈なし病) Aortitis Syndrome】

[どんな病気か]
 動脈の壁が慢性的な炎症によって厚くなり、動脈内径が細くなって血液の流れ(血流)が悪くなる病気です。動脈壁がふくらんで動脈瘤(どうみゃくりゅう)ができる場合も一部でみられます。
 炎症がおこるのは、大型の動脈にかぎられ、心臓に接続する動脈本幹(どうみゃくほんかん)(大動脈)と、そこから出て脳や腎臓(じんぞう)などの臓器に至るまでの主分枝(しゅぶんし)にみられます。手足や臓器内部の中・小動脈にはおこりません。ただし、肺動脈にかぎっては、中・小動脈枝にもおこります。
 なぜ炎症がおこるかについては、まだわかっていません。発病は15~20歳の若い人に多く、男女別では女性に男性の8倍も多くみられます。また、日本人を含め東洋人に多くみられます。
 炎症は、動脈に一様におこるのではなく、部分的におこり、おこる部位も患者さんによって異なります。このため、血行障害(けっこうしょうがい)をおこす臓器もそれぞれちがい、同じ病気でも患者さんによって異なった状態になります。
[症状]
 発病初期には、動脈炎による発熱、貧血などがみられます。6か月以上経過すると動脈血行障害による症状が出てきます。疲れやすい、動悸(どうき)、めまいのほか、頸部動脈(けいぶどうみゃく)の血行障害では、まぶしい、目がかすむ、耳鳴(みみな)りがするなどの症状がみられます。検査すると、頸部の血管に雑音が聞こえ、脈拍の微弱化もみられます。重くなると、視力が低下し、ひどい場合、失明(しつめい)することもあります。
 手に行く動脈(鎖骨下動脈(さこつかどうみゃく))が障害されると、手が冷たく、だるくなり、仕事をすると手が疲れやすくなります。手の脈も触れにくくなり、左右で血圧の差が出ます。手と足で血圧差が出ることもあります。これらの場合は、強い障害をおこすことはなく、日常生活を制限する必要はありません。
 腎臓へ行く動脈(腎動脈(じんどうみゃく))が障害されると、重度の高血圧となり、若い人でもしばしば脳出血(のうしゅっけつ)をおこします。
 腸へ行く動脈(腸間膜動脈(ちょうかんまくどうみゃく))が障害されると、一時的に下痢(げり)、体重減少をおこすことがあります。この場合は、腸の動脈間に自然にバイパス(迂回路(うかいろ))ができるため、症状は一時的で、やがて消えてしまいます。
 心臓の出口と大動脈の接続部には大動脈弁(だいどうみゃくべん)がありますが、この部位が障害されると弁膜症(べんまくしょう)になり、聴診すると雑音が聞こえます。軽症のことが多く、日常生活に支障はありませんが、重度の弁膜症となることが4%程度の少数例でみられます。このときの症状は、呼吸困難、浮腫(ふしゅ)、胸痛(きょうつう)、倦怠感(けんたいかん)などの心不全(しんふぜん)の症状がみられるため、日常生活を強く制限しなければなりません。
 また、この部位には、心臓自身に血液を送る冠動脈(かんどうみゃく)がありますが、この動脈の出口が細くなると、狭心症(きょうしんしょう)や心筋梗塞(しんきんこうそく)を発病します。
 肺動脈が障害されると、一時的にせきやたんが出ます。さらに、まれですが、障害が片方の肺全体を越えて広範囲におよぶことがあります。こうなると、呼吸困難のために労作困難となり、慢性呼吸不全(まんせいこきゅうふぜん)になることがあります。
 動脈障害部位は患者さんによって異なるため、症状も患者さんによってちがいます。また、前述した症状が1人の人にみな出るわけではありません。
[検査と診断]
 動脈炎の炎症の状態は、血液の赤沈(せきちん)やCRP(C反応たんぱく)陽性などの炎症反応と前述した症状を合わせて判定されます。
 しばらくは強い反応がみられ、少しずつ軽くなっていきますが、数年から数十年かかるのがふつうです。このため、いったん発病したら、ときどき血液検査を受ける必要があります。
 動脈障害部位は、血管雑音や脈拍、血圧の部位差によっておおよそ推定できるのですが、正確にはX線による血管造影検査によって、障害された動脈の狭窄や拡張の型、その程度、障害の範囲が確認されます(CTやMRIも使われますが、まだ血管造影ほど正確ではありません)。動脈障害と血行障害のある臓器が判定されたら、治療法が決められます。
 合併症の診断は各臓器で異なります。頭部については、眼科検査が行なわれ、眼部の血行障害が目安にされます。
 心臓については、弁膜症は心エコー図で、狭心症は運動負荷心電図検査や心筋シンチグラムで判定されます。
 腎臓については、血液と尿の検査に加え、レニンアルドステロンなどのホルモン検査のほか、レノグラム放射性同位元素(ほうしゃせいどういげんそ)による腎機能検査)などを行なったうえで判定されます。
 肺については、シンチグラムで判定しますが、高度の場合は呼吸機能検査を加えて判定します。
[治療]
 動脈に高度の炎症反応がみられ、炎症による症状がある場合は、副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬が使われます。最初は比較的大量で使用され、数か月後に減量され、その後は少量が数年間使用されます。いつ中止するかは、患者さんの状態で決まります。
 血行障害による疾患で、もっとも多いのは高血圧です。本態性高血圧(ほんたいせいこうけつあつ)よりも血圧が動揺する傾向があります。ふつうの高血圧と同様、降圧薬(こうあつやく)が継続して使用されます。
 弁膜症、狭心症、心不全はそれぞれの疾患について定められた治療が行なわれます。ただし、重症の場合や、薬の効果が十分でない場合は外科手術が行なわれます。
 腎動脈が障害されると経過が悪くなることが多いので、早期に血行再建手術やPTRA(経皮経管腎動脈形成術(けいひけいかんじんどうみゃくけいせいじゅつ))が行なわれます。

出典|小学館
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それぞれの用語は執筆時点での最新のもので、常に最新の内容であることを保証するものではありません。この事典によって自己判断、自己治療をすることはお止めください。あくまで症状と病気の関係についてのおおよその知識を得るためのものとお考えください。

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