朝鮮の伝統的な横笛。現在の大笒は全長73~84cmくらいで,太くて肉の厚い双骨竹と呼ぶ固い竹で作る。吹き口と指孔の間に清孔と呼ぶ竹紙を張った膜孔があり,吹き込まれる空気によって竹紙が微妙に振動するため独特の音色と強弱の変化が出る。指孔は等間隔に6個あり,末端に近い部分に七星孔と呼ぶ五つの穴がある。この穴は音律調節と楽器全体の均整をとるためのもの。吹奏の難しい楽器だが,指の使い方で半音も自在に出せるし,吹き方により音域も広がる。唐楽にも郷楽にも用いる。また構造は同じだが,筒音が短2度ないし長2度高い〈シナウィ〉と呼ばれた器楽合奏(全羅道や京畿道南部で行われてきた巫楽)用の大笒もある。歴史的にも古く,新羅の三竹として中笒と小笒とともに,三国時代からすでに存在していた。
執筆者:草野 妙子
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
朝鮮の伝統的楽器で、竹製の横笛。『三国史記』に中笒、小笒とともに記載された新羅三竹(しらぎさんちく)の一つで、三国時代(4~7世紀中期)からすでに存在していた。長さ約80センチメートル、径約3センチメートル、吹口(ふきぐち)と6個の指孔のほか、管端に七星孔という音律調律用の穴が数個ある。また、指孔と吹口の間に清孔とよばれる穴があり、ここに竹紙(タケやアシの内皮膜)を貼(は)る。二オクターブ半の音域をもち、低音域の音色は柔らかく荘重、高音域は竹紙の微妙な振動により、澄んだ多様な音色を出す。正楽(せいがく)(広義の雅楽)大笒と、制度は同じで筒音(つつね)が長二度高い民俗楽用の散調(さんじょう)大笒の2種があり、器楽合奏、歌曲や舞踊の伴奏、また独奏楽器としても広く用いられている。
[志村哲男]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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