竹を製紙原料とする紙。中国では唐の初めころから漉(す)かれたとみられ,薄いわりにはじょうぶで平滑なため,書画などに用いられた。北宋以後,技術向上によりさらに良質で大量かつ安価につくられるようになり,宋元版をはじめ,明・清には版本や書画用に最も多く用いられた。原料とされる竹はマダケやハチクなど50種以上あり,《天工開物》によれば,枝葉の生えようとしている竹を最上とし,6月6日ころに山上で竹をきる。1.5mほどにきって溜池に100日以上漬けてから槌でたたいて清水で皮を洗い去り(これを〈殺青(さつせい)〉という),繊維状になったもの(竹麻(ちくま))に石灰を塗って8昼夜ほど煮る。清水で洗ってから,草木の灰汁で煮ては冷ましを繰り返す。10余日おいて自然発酵したものを臼でついてどろどろにしてから紙に漉き,炉壁に貼って乾燥させる。
竹紙は日本でも手順の前後はあっても同様にして漉かれたが,コウゾなどを原料とする和紙の強靱さには及ぶべくもなく,あまり行われなかった。中国では現在でも多く漉かれている。竹紙の製造は,それまでの麻や樹皮を原料とする製紙法から,樹木の木質部もパルプ化して紙をつくることへの先駆をなしたものといえよう。
→唐紙(からかみ)
執筆者:須山 努
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 図書館情報学用語辞典 第4版図書館情報学用語辞典 第5版について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
… 粗末な紙の材料には麦や稲の茎を使用したが,これらは〈土紙〉とか〈火紙〉などと呼ばれた。中国では後世〈竹紙〉がかなり広く使用されたが,この製法がいつごろ始まったかにはかなり問題がある。南宋の趙希(ちようきこく)の《洞天清録集》には,二王(王羲之,王献之)の真跡は多く会稽の竪紋竹紙に書かれているが,これは東晋の南渡後には北方の紙が得がたく,また2人は会稽にいることが多かったからだという。…
※「竹紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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