竹紙(読み)チクシ

デジタル大辞泉 「竹紙」の意味・読み・例文・類語

ちく‐し【竹紙】

中国産の竹の繊維で作った紙。破れやすいが墨引きがよく、書画に用いた。
竹の幹内にある紙状の薄皮

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精選版 日本国語大辞典 「竹紙」の意味・読み・例文・類語

ちく‐し【竹紙】

〘名〙
① 竹の幹の中にある薄い皮。
山吹(1944)〈室生犀星〉九「竹紙を張った一つの孔の鳴りを七つの孔に合せて」
② 中国から輸入した竹を原料とする手漉(てすき)紙。破れやすい欠点はあるが、墨引きがよいため、書画用紙、または表装用紙として用いる。
大和本草(1709)九「竹〈略〉造竹紙法。天功開物云書に詳なり。竹紙は中夏より来る」

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改訂新版 世界大百科事典 「竹紙」の意味・わかりやすい解説

竹紙 (ちくし)

竹を製紙原料とする紙。中国では唐の初めころから漉(す)かれたとみられ,薄いわりにはじょうぶで平滑なため,書画などに用いられた。北宋以後,技術向上によりさらに良質で大量かつ安価につくられるようになり,宋元版をはじめ,明・清には版本や書画用に最も多く用いられた。原料とされる竹はマダケやハチクなど50種以上あり,《天工開物》によれば,枝葉の生えようとしている竹を最上とし,6月6日ころに山上で竹をきる。1.5mほどにきって溜池に100日以上漬けてから槌でたたいて清水で皮を洗い去り(これを〈殺青(さつせい)〉という),繊維状になったもの(竹麻(ちくま))に石灰を塗って8昼夜ほど煮る。清水で洗ってから,草木の灰汁で煮ては冷ましを繰り返す。10余日おいて自然発酵したものを臼でついてどろどろにしてから紙に漉き,炉壁に貼って乾燥させる。

 竹紙は日本でも手順の前後はあっても同様にして漉かれたが,コウゾなどを原料とする和紙の強靱さには及ぶべくもなく,あまり行われなかった。中国では現在でも多く漉かれている。竹紙の製造は,それまでの麻や樹皮を原料とする製紙法から,樹木の木質部もパルプ化して紙をつくることへの先駆をなしたものといえよう。
唐紙からかみ
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「竹紙」の意味・わかりやすい解説

竹紙
ちくし

多くの国語辞書には、「竹の幹の内面にある薄い皮膜、またはこれに似た薄い鳥の子紙、雁皮紙(がんぴし)、あるいは唐紙の異称」と説明されているが、用例が見当たらない。731年(天平3)の『正倉院文書』に初出する竹幕紙(ちくまくし)が竹紙と同じものであるとすれば、中国や台湾で抄造される竹の繊維を原料とした紙と解される。明(みん)の宋応星(そうおうせい)著『天工開物(てんこうかいぶつ)』(1637)には、殺青(さっせい)(汗青(かんせい))と称して竹紙の製法が詳述されている。

[町田誠之]

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図書館情報学用語辞典 第5版 「竹紙」の解説

竹紙

若竹の繊維を原料に漉かれた中国製の紙.晋唐の時代に始まり,明時代の印刷に多く用いられた.虫には強いが,折りに弱く,あまり丈夫ではない.日本では,江戸の中期以降に書画に用いられた.

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普及版 字通 「竹紙」の読み・字形・画数・意味

【竹紙】ちくし

竹のすき紙。

字通「竹」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の竹紙の言及

【紙】より

… 粗末な紙の材料には麦や稲の茎を使用したが,これらは〈土紙〉とか〈火紙〉などと呼ばれた。中国では後世〈竹紙〉がかなり広く使用されたが,この製法がいつごろ始まったかにはかなり問題がある。南宋の趙希(ちようきこく)の《洞天清録集》には,二王(王羲之,王献之)の真跡は多く会稽の竪紋竹紙に書かれているが,これは東晋の南渡後には北方の紙が得がたく,また2人は会稽にいることが多かったからだという。…

※「竹紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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