大薩摩主膳太夫(読み)おおざつましゅぜんだゆう

精選版 日本国語大辞典 「大薩摩主膳太夫」の意味・読み・例文・類語

おおざつま‐しゅぜんだゆうおほざつまシュゼンダイフ【大薩摩主膳太夫】

  1. 浄瑠璃大薩摩節の家元。初世水戸に生まれ、薩摩掾外記に入門したという。別号大薩摩外記藤原直勝。享保一七一六‐三六)のころから歌舞伎劇場出演。豪快な曲を豊かな声量で語って人気を得た。元祿八~宝暦九年(一六九五‐一七五九

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改訂新版 世界大百科事典 「大薩摩主膳太夫」の意味・わかりやすい解説

大薩摩主膳太夫 (おおざつましゅぜんだゆう)

大薩摩節の家元。3世をもって絶える。(1)初世(1695-1759・元禄8-宝暦9) 大薩摩節の流祖。前名薩摩文五郎。享保初年(1720年ころ)に大薩摩節創始,大薩摩主膳太夫と改名する。江戸歌舞伎荒事の伴奏を勤めて好評を博す。(2)2世(1729-77・享保14-安永6) 初世の子と伝えられる。前名大薩摩右扇太夫。1760年(宝暦10)主膳太夫を襲名。64年(明和1)11月,江戸市村座で長唄の初世富士田吉治と《鞭桜宇佐幣(むちざくらうさのみてぐら)》の掛合に出演する。これが長唄と大薩摩節との掛合の最初である。(3)3世(?-1800(寛政12)) 2世の門弟。前名文太夫。1770年(明和7)主膳太夫を襲名。晩年源太夫と改める。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「大薩摩主膳太夫」の意味・わかりやすい解説

大薩摩主膳太夫
おおざつましゅぜんだゆう

[生]元禄8(1695)
[没]宝暦9(1759)
大薩摩節浄瑠璃の家元。水戸の出身で芝源助といったが,最初薩摩文五郎と名のり,のちには大薩摩外記藤原直勝とも号した。薩摩外記の高弟で,正徳2 (1712) 年頃から操人形芝居の興行を始め,享保初年に歌舞伎に出て,外記節 (げきぶし) に代って荒事 (あらごと) の伴奏をつとめた。享保 14 (29) 年正月,中村座の『鏃 (やのね) 五郎』の演奏が特に好評を得た。なお2世 (享保 14〈1729〉~安永6〈1777〉) は1世の子の朝日太夫が,3世 (?~寛政 12〈1800〉) は1世または2世の門の初世太夫が継いだ。

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朝日日本歴史人物事典 「大薩摩主膳太夫」の解説

大薩摩主膳太夫(初代)

没年:宝暦9.5.8(1759.6.2)
生年:元禄7頃(1694)
江戸中期の大薩摩節の太夫。水戸の生まれ。通称源助。江戸の操り座薩摩外記座に入り,初め薩摩文五郎と名乗る。外記没後の享保5(1720)年2代目市川団十郎の「楪根元曾我」の曾我五郎の出に薩摩主膳の名で,同14年には同じく団十郎の「矢の根」に大薩摩主膳太夫と名乗って浄瑠璃を勤め,その語り口が団十郎の荒事と見事に合って,雄渾豪壮な節と奏法を特色とする大薩摩節が一世を風靡したという。しかし主膳太夫没後は次第におとろえ,長唄に吸収されていった。<参考文献>宮内寿松『大薩摩の代々』

(竹内道敬)

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「大薩摩主膳太夫」の解説

大薩摩主膳太夫(初代) おおざつま-しゅぜんだゆう

1695-1759 江戸時代中期の浄瑠璃(じょうるり)太夫。
元禄(げんろく)8年生まれ。大薩摩節の祖。薩摩掾外記(さつまのじょう-げき)の高弟とされ,薩摩文五郎を名のる。享保(きょうほう)のころ歌舞伎の2代市川団十郎の語りをつとめ好評をえた。豪快な曲風で「鏃(やのね)五郎」「鳴神」などを得意とした。宝暦9年5月8日死去。65歳。常陸(ひたち)(茨城県)出身。通称は柳屋芝源助。

大薩摩主膳太夫(2代) おおざつま-しゅぜんだゆう

1729-1777 江戸時代中期の浄瑠璃(じょうるり)太夫。
享保(きょうほう)14年生まれ。初代大薩摩主膳太夫の子とも,養子ともいわれる。宝暦4年江戸中村座で「夜鶴花巣籠」を演じて好評を得,9年2代を襲名。明和7年門弟の文太夫に3代をゆずる。安永6年6月16日死去。49歳。前名は朝日太夫。

大薩摩主膳太夫(3代) おおざつま-しゅぜんだゆう

?-1800 江戸時代中期-後期の浄瑠璃(じょうるり)太夫。
2代(一説に初代)大薩摩主膳太夫の門弟。明和5年江戸中村座で「念力小蝶幻」をつとめた。7年3代を襲名。おもな語り物は「青山鶯宿梅」「初夢姿富士」など。寛政12年5月26日死去。前名は文太夫(初代)。

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世界大百科事典(旧版)内の大薩摩主膳太夫の言及

【大薩摩節】より

…江戸時代の初め,京都から江戸に下った浄瑠璃語り薩摩浄雲の流れをくむ硬派の浄瑠璃。文献では薩摩外記大掾藤原直政の門弟薩摩文五郎が大薩摩主膳太夫と改名して享保初年(1720年ころ)に創始したといわれる。享保~宝暦期(18世紀中ころ)に江戸歌舞伎の市川流荒事の伴奏音楽として全盛期をむかえたが,中期以後しだいに,長唄や豊後節系浄瑠璃に圧倒されて衰退,1826年(文政9),家元権が4世杵屋(きねや)三郎助(のち10世六左衛門)にあずけられ,さらに68年(明治1)にはその家元権が正式に3世杵屋勘五郎に譲与されて,長唄に吸収された。…

【外記節】より

…2世は操り芝居を興行していたが歌舞伎芝居にも出演,市川流の荒事に用いられた。しかし享保初年(1710年代後半)ころ門弟の大薩摩主膳太夫(おおざつましゆぜんだゆう)が代わって歌舞伎芝居へ出演するようになって,外記節はしだいに衰えた。大薩摩節が後年長唄に吸収されたこともあって,外記節の楽風は大薩摩とともに長唄に残ったといわれる。…

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